日本クリニカルパス学会誌
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学会報告(第10回学術集会)シンポジウム5 クリニカルパスと臨床指標
周術期管理の標準化と臨床指標
野尻 佳克岡村 菊夫
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2010 年 12 巻 2 号 p. 141-143

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抄録

 平成13年から15年に行ったTURPクリニカルパス研究において、我々は複数施設で共通パスを用いると周術期管理の標準化が可能であることを示した。平成16年から平成18年にかけての研究では、複数施設において成績をお互いに公開し、議論を重ねたうえで前立腺全摘除術のパスをそれぞれの施設で作成すると、管理目標の標準化が行われ、成績自体の標準化も進むことがわかった。平成17年と平成19年に行った全国アンケート調査では、全国の泌尿器科医の間に入院期間を短縮する方向への意識変革が見受けられたものの、平成19年に全国156施設で行われた実際のTURP周術期成績は、設定した目標に達してはいなかった。抗菌薬使用期間は短くなっていたが、その理由の一つとして、平成18年に泌尿器科領域における周術期感染予防ガイドラインが発行されたことがあげられた。平成19年の日本Endourology & ESWL学会においてTURP周術期管理の標準的目標を定めた。それをもとに作成した標準パスを研究参加施設に送付し、パスの新規作成または改訂を依頼したところ、抗菌薬使用期間や術後入院期間の設定が短縮したことを確認した。今後、パス新規作成、改訂後の実際の成績変化を平成19年と比較し、患者満足度調査も行う予定である。施設ごとの手術の質のばらつきも想定され、周術期管理の質を評価するための臨床指標は入院期間だけでは不十分であろう。また、患者背景の違いや、個々の医師が考える医療の安全や質にはある程度の差異が存在するはずであり、治療成績や合併症、患者満足度などを総合的に判断する必要がある。

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© 2010 一般社団法人日本クリニカルパス学会
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