日本クリニカルパス学会誌
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実践報告
シスプラチン・ビノレルビン併用化学療法における肺癌治療クリニカルパス標準化の試み
柴田 雅彦
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2011 年 13 巻 2 号 p. 123-129

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抄録

 厚生労働科学研究費補助金(第3次対がん総合戦略研究事業)による研究班では、シスプラチン・ビノレルビン併用化学療法における肺癌治療の標準クリニカルパス(以下、標準パス)を作成した。対象としたのは70歳以下で全身状態良好な、根治的胸部放射線治療が不可能な臨床病期ⅢBまたはⅣの症例である。標準パスの指標として研究者の所属する施設で使用しているクリニカルパスを収集し、問題点と標準化について検討した。標準パスの作成条件を統一させるために「標準パス策定規定」を設置した。本邦で行われた進行非小細胞肺癌に対する多施設共同第Ⅲ相比較試験の試験実施計画書を参考にして作成された標準パスは、evidenceに基づいて妥当性を検討した。具体的な検討項目として、アウトカム設定・適応基準・観察項目・標準的入院日数・条件付き指示・制吐剤などが挙げられる。抗癌剤の投与量と投与方法は、参考にした臨床試験に準じた内容となっている。今後医療機関での実践を計画しており、検証とバリアンスの集積を行い、質の向上に努めていく予定である。そして、日々進歩していく医療に対応するために標準パスのevidence levelを再検討し、新たな知見を取り入れていく予定である。標準パスを用いることで、医療安全の推進・医療効率の向上・がん治療の均てん化・がん診療の包括医療の発展を期待したい。

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© 2011 一般社団法人日本クリニカルパス学会
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