日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
13 巻, 2 号
日本クリニカルパス学会誌 第13巻 第2号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
総説
  • ー経験から科学へー
    副島 秀久, 中熊 英貴
    2011 年 13 巻 2 号 p. 91-97
    発行日: 2011/06/30
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

     日本クリニカルパス学会用語・出版委員会では用語・出版委員会アウトカム部会で約2年間の議論を経て、患者アウトカムの基本マスター(Basic Outcome Master:BOM)を作成した。各施設で使われている患者アウトカムの内容を吟味し、追加、削除を行った結果、302のアウトカムに集約した。集約した302のアウトカム以外に今後、各施設で必要と思われるものが新たに発生することを考慮し、Othersの大分類を作り、そこにいったん収納し、部会での審議を経てアウトカムとしての採用の是非を決めることとした。BOMの作成は電子化の準備として必要な作業であるだけでなく、効率的な記録やバリアンス収集にもつながるものとして位置づけた。BOMでは大分類−中分類−アウトカムをヒモ付けしたが、今回の作業ではアウトカムのさらに下位に位置する観察項目(アセスメントあるいは判断基準)とのヒモ付けは、観察項目自体が多様で標準化は困難と考え、行わなかった。今回の整理でアウトカムの粒度や重要性が明確になり、文言の整合性も確保できた。今後、観察項目の事例を各施設から集め、標準的なアウトカム−観察項目セットができれば記録の整合性や客観的評価が可能になり、さらに分析系を充実させることでクリニカルパス本来の目的である医療の向上に資すると考えている。

  • 下村 裕見子, 池田 俊也, 武藤 正樹, 谷水 正人
    2011 年 13 巻 2 号 p. 98-104
    発行日: 2011/06/30
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

     がん対策基本法に基づくがん対策推進基本計画およびがん診療連携拠点病院の指定要件の見直しに伴い、5大がんの地域連携クリニカルパスの整備が求められている。今回の全国調査で回答のあった施設で、本調査によって2008年12月までに、全国のがん診療連携拠点病院らによって、24病院でがん地域連携クリニカルパスが存在し、これらを用いて1,320名の患者が医療を受けていることが確認された。また2009年1月から11月末まででは、73病院3,542人が確認され約3倍の増加を認めた。がん地域連携クリニカルパスフォーマットは都道府県統一で作成している傾向が確認できた。がん診療における連携の難しさの要因としては「地域連携ネットワークの未成熟」「在宅医療の未成熟」等の回答が多かった。連携担当者には、かかりつけ医や患者家族に「がん地域連携クリニカルパスの使用(手順)説明」や「逆紹介先の紹介業務」に対する役割を求める声が多く聞かれた。

原著
  • ~熊本県上天草地区~
    白井 純宏, 具嶋 泰弘, 前原 潤一, 町田 健治, 井上 浩伸, 町田 二郎, 小妻 幸男, 多田 修治, 副島 秀久, 藤岡 正導, ...
    2011 年 13 巻 2 号 p. 107-114
    発行日: 2011/06/30
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

     日本透析医学会統計調査委員会「図説 わが国の慢性透析療法の現況」によると慢性維持透析患者数は年々増加しており2009年12月31日現在の段階で290,675人であった1)。特に都道府県別人口100万人あたりでは熊本県は2009年度の調査で3,210人と全国第1位であり、なかでも上天草市は平成18年の調査で熊本県内4番目に透析患者数が多く慢性腎臓病(CKD)対策が急務な地域であった。済生会みすみ病院では平成19年4月に腎臓病外来を開設、保存期腎不全の管理を行い、行政の協力のもと平成21年より独自の地域連携クリニカルパスの運用を開始した。また、腎不全進行を予測する因子についても統計学的検討を行った。調査期間は平成21年4月から平成22年7月までの16ヵ月間でデータ追跡可能な63例についてパス使用群(39例)と定期外来群(24例)につき検討を行った。原疾患では腎硬化症が最も多く慢性糸球体腎炎、糖尿病性腎症の順であった。パスの効果判定の指標には血清Cr値、eGFR値、病期、尿蛋白/尿Cr比をパス使用前後で算出し効果判定を行った。その結果、尿蛋白の改善、悪化と血圧との関係では血圧コントロール良好群で有意に尿蛋白が改善していた(p<0.0267)。CKDにおける連携パスを用いた共同診療は地域での腎不全悪化および透析導入を抑制するうえで有用であり今後も継続して行うべきと考えられた。

実践報告
  • 細見 昌弘, 勝二 達也, 春岡 登志子
    2011 年 13 巻 2 号 p. 117-122
    発行日: 2011/06/30
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

     アウトカムとこれに関連したアセスメントの階層化マスタを作成する目的で、電子カルテに登録された適応実データを解析し、重要アウトカムと関連アセスメントのセット化を試みた。2009年1年間の適応クリニカルパスデータを用いて、患者ID ×日付をキーに重要アウトカム・アセスメント・バリアンスの有無をフィールドとしたデータマートを作成し、重要アウトカムごとに因子分析を行い、関連アセスメント項目としての患者アウトカムのセット化を試みた。結果得られた階層化マスタは関係するクリニカルパスの種類やその作成者に依存する面も見られたが、クリニカルパスを作成する際に設定アウトカムに対するアセスメント選択を補助したり、登録済みデータのアセスメントの分析からアウトカムを割り出したりと、電子カルテ上での有用な機能が期待できると考えられた。

  • 柴田 雅彦
    2011 年 13 巻 2 号 p. 123-129
    発行日: 2011/06/30
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

     厚生労働科学研究費補助金(第3次対がん総合戦略研究事業)による研究班では、シスプラチン・ビノレルビン併用化学療法における肺癌治療の標準クリニカルパス(以下、標準パス)を作成した。対象としたのは70歳以下で全身状態良好な、根治的胸部放射線治療が不可能な臨床病期ⅢBまたはⅣの症例である。標準パスの指標として研究者の所属する施設で使用しているクリニカルパスを収集し、問題点と標準化について検討した。標準パスの作成条件を統一させるために「標準パス策定規定」を設置した。本邦で行われた進行非小細胞肺癌に対する多施設共同第Ⅲ相比較試験の試験実施計画書を参考にして作成された標準パスは、evidenceに基づいて妥当性を検討した。具体的な検討項目として、アウトカム設定・適応基準・観察項目・標準的入院日数・条件付き指示・制吐剤などが挙げられる。抗癌剤の投与量と投与方法は、参考にした臨床試験に準じた内容となっている。今後医療機関での実践を計画しており、検証とバリアンスの集積を行い、質の向上に努めていく予定である。そして、日々進歩していく医療に対応するために標準パスのevidence levelを再検討し、新たな知見を取り入れていく予定である。標準パスを用いることで、医療安全の推進・医療効率の向上・がん治療の均てん化・がん診療の包括医療の発展を期待したい。

学会報告(第11回学術集会)シンポジウム1 パスのデータ分析
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