日本透析医学会統計調査委員会「図説 わが国の慢性透析療法の現況」によると慢性維持透析患者数は年々増加しており2009年12月31日現在の段階で290,675人であった1)。特に都道府県別人口100万人あたりでは熊本県は2009年度の調査で3,210人と全国第1位であり、なかでも上天草市は平成18年の調査で熊本県内4番目に透析患者数が多く慢性腎臓病(CKD)対策が急務な地域であった。済生会みすみ病院では平成19年4月に腎臓病外来を開設、保存期腎不全の管理を行い、行政の協力のもと平成21年より独自の地域連携クリニカルパスの運用を開始した。また、腎不全進行を予測する因子についても統計学的検討を行った。調査期間は平成21年4月から平成22年7月までの16ヵ月間でデータ追跡可能な63例についてパス使用群(39例)と定期外来群(24例)につき検討を行った。原疾患では腎硬化症が最も多く慢性糸球体腎炎、糖尿病性腎症の順であった。パスの効果判定の指標には血清Cr値、eGFR値、病期、尿蛋白/尿Cr比をパス使用前後で算出し効果判定を行った。その結果、尿蛋白の改善、悪化と血圧との関係では血圧コントロール良好群で有意に尿蛋白が改善していた(p<0.0267)。CKDにおける連携パスを用いた共同診療は地域での腎不全悪化および透析導入を抑制するうえで有用であり今後も継続して行うべきと考えられた。
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