2011 年 13 巻 3 号 p. 157-165
緒言:本研究は、看護師、介護士の必要労働時間を見積もる方法として、クリニカルパス(以下、パス)に基づくシミュレーションの方法を考案し、その妥当性を検討することを目的とする。看護業務の所要時間推定法には、TNS(Toranomon Nursing System)、KNS(Kitasato Nursing System)と、看護必要度が広く用いられているが、いずれもパスに基づく推定法ではない。本研究では、パス「心臓カテーテル検査3日コース」(以下、本パス)を並行実施する場合を例として必要労働時間を推定するシミュレーションを行った。
方法:シミュレーション方法(本方法)は次のとおりである。1)本パスにおける、患者に対する医療行為・ケアの詳細化を行い、2)その所要時間を実測し、3)本パスの並行実施スケジュールと、病棟看護師・介護士の割り当てを4週間分設定し、4)所要時間の積み上げ計算を個々の看護師、介護士ごとに行い、1時間当たり必要労働時間数の値を1日24時間分、曜日ごと4週間分、求めた。
結果:本方法で得た値を分析した結果、値の推移は本パス上のどの時点の患者を担当するかによって決まること、曜日による値の異なりは当日の入院、退院、検査の重なりの程度により決まること、値が1.0を超える場合は仕事の遅れの原因になることが明らかになった。結果は実態と一致するため、本方法も妥当と考えられる。
結論:本方法は必要労働時間を推定する方法として妥当である。