2012 年 14 巻 2 号 p. 141-146
目的:患者の医療への主体的な参加を促すために、従来の糖尿病教育入院の医療者用パスを患者に開示し、さらに患者自身が記録する欄を設け、患者と医療者が診療情報を共有できる患者参加型パスを開発・活用した。
方法:アクションリサーチを用いて、患者参加型パスの開発・活用における患者および医療者の経験と評価を明らかにした。
結果:患者参加型パス開発時には、医療者は患者の記録への期待と記録開示への不安があったが、活用する中でその不安は軽減した。患者参加型パスの活用により、患者は生活の振り返りができ、知識の理解が進むことを実感した。そして、医療者や自己の記録内容をきっかけに医療者との対話が増加し、その結果、患者は自分の医療に主体的に関わることができたことを実感し、入院生活が有意義で楽しかったと評価した。医療者は、患者と共通認識を持ち、共に治療に取り組むことができたと感じた。当初、すべての患者への活用は難しいと考えていたが、活用が進むにつれて、情報共有の有効性を認識し、他の患者に活用する価値があると考えるようになった。
結論:患者参加型パスの開発によって、患者との情報共有に関する医療者の持つ抵抗感や期待が明らかになった。さらに、患者参加型パスの活用は、患者の主体的な医療への参加、医療者の情報共有に関する意識変化と患者の思いや考えに沿った医療の実践につながり、患者参加型医療の促進に有効であったといえる。