日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
14 巻, 2 号
日本クリニカルパス学会誌 第14巻 第2号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
2011年度第12回学術集会 特別講演
総説
  • 松崎 政三
    2012 年14 巻2 号 p. 103-110
    発行日: 2012/06/22
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

     日本クリニカルパス学会誌に栄養管理として投稿された論文は、栄養教育、栄養補給、NST、チーム医療について、原著3本、実践報告4本、学会報告5本、シンポジウム報告1本、講演会報告1本である。学会設立から13年経過の中では少ない論文数である。論文数が少ない理由としては以下のことが考えられる。栄養管理は、大きく2つの業務に分けられる。1つは栄養教育であり、2つは栄養補給である。これらの業務はいずれも個別性が高い。栄養教育は教育プログラム、指導方法、患者の行動変容と実践度の評価などがある。また、栄養補給では、栄養必要量の算出、栄養補給法の決定と補給ルートの決定、栄養状態の改善の評価などの課題があり、これらについて評価方法、EBM(evidence-based medicine)が少なく確立されていないなどの問題がある。こうした中でも現在、多くの病院ではチーム医療の中で、栄養療法チームとしてNSTが作られ、クリニカルパスに最善の栄養療法の組み込みが進められ、適切な栄養管理を行われるようになってきている。栄養管理を行ううえでの、栄養教育と栄養補給をクリニカルパスに組み込むための現状の問題点と今後の方向性を検討する。

原著
  • 瓜生 恭章, 西浦 哲史, 山本 朋納, 馬越 泰生, 西田 美帆, 鈴木 美絵子, 小西 千尋, 松浦 暢子, 峰 睦子, 酒井 敬, 原 ...
    2012 年14 巻2 号 p. 113-121
    発行日: 2012/06/22
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

     DPC(Diagnosis Procedure Combination)が2006年6月に当院で導入されたのに伴い、診療報酬の減少が予想された。今回当院における肺炎球菌性肺炎入院患者のDPC導入前後における診療報酬の検討を行ったため報告する。入院期間、抗菌薬を変更した156種類の電子化クリニカルパス(e-CP)を作成しDPCと出来高算定の診療報酬を比較した。2004年10月~2010年3月に肺炎球菌性肺炎と診断された349例をA群:出来高期、B群:DPC改定前、C群:DPC改定後に分類、また肺炎球菌のペニシリン耐性度で各群を分類し診療報酬の比較検討を行った。e-CPを使ったシミュレーションではDPC導入群で診療報酬の減少が認められ、DPC改定後さらに減少することが予想された。実際の入院患者で算定した診療報酬は、B、C群でDPCが出来高算定を上回る結果が得られた。一方、肺炎球菌の耐性化による診療報酬の変化は認められなかった。DPC導入後、診療報酬の増加の理由として副傷病名の追加、病名が肺炎からより高額なDPC病名へ変更されたことおよび抗菌薬費用の減少が関与したと考えられた。

実践報告
  • ~静脈血栓塞栓症予防への取り組み~
    田村 拓夢, 加茂 早百合, 簗場 理江, 行俊 可愛, 新甫 知恵, 高橋 恵
    2012 年14 巻2 号 p. 125-130
    発行日: 2012/06/22
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

     近年、精神科領域でも、身体拘束に伴う静脈血栓塞栓症の予防と対策が急務となっている。今回の研究対象となったA病棟は、大学病院の精神神経科閉鎖病棟で身体拘束適応患者は多いが、A病棟には静脈血栓塞栓症予防に対するマニュアルはなく、実際に静脈血栓塞栓症の発生事例を認めていた。そこで医療の質の向上を目指し、静脈血栓塞栓症の予防・早期発見を目的とした身体拘束クリニカルパス作成に取り組んだ。適応基準については、精神保健福祉法を基に作成し、静脈血栓塞栓症を認める場合を、除外基準、逸脱基準とした。また、適応基準や身体拘束における合併症を基にアウトカムを設定し、静脈血栓塞栓症予防に対して文献を基にタスクを検討した。精神科の身体拘束適応患者は、精神症状によって身体拘束を行う目的や必要なケアも様々である。そこで静脈血栓塞栓症予防に焦点を当てて作成することで、スムーズにアウトカムやタスクの設定を行うことができた。だがこれだけでは、治療経過の異なる精神科の患者のケアや観察をすべて網羅することは困難であった。そのため、従来使用していた看護記録用紙や身体拘束観察記録用紙を併用することで、様々な患者に対応することができた。しかしアウトカムやバリアンスの基準、発生時の対応については医師により判断が異なる場合があるため、今後一元化できるよう検討していくとともに、静脈血栓塞栓症予防に対する効果についての検討が課題といえる。

  • 高橋 潔, 西井 幸信, 久保田 聰美, 鍵本 由紀, 浜口 伸正, 渡邊 裕修
    2012 年14 巻2 号 p. 131-135
    発行日: 2012/06/22
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

     地域中核病院同士での合同クリニカルパス(以下、パス)大会を報告する。パス大会は医療工程を多職種によって議論検討する会である。当初はパスの啓蒙と作成の動機づけが多くみられたが、その後パスの浸透につれ他の委員会活動を巻き込んだ形や、治療過程の問題点を議論する形に移行し病院機能や医療の質といったより幅広い視点からの開催目的に変遷してきている。手法としてはボトムアップであるが、病院中枢部が会に参加していることが多く、議論された問題がトップダウンで改善に向かうことが多い。合同パス大会になると職員への動機づけ、地域への医療貢献、地域医療標準化などに効果があるが担当者への負担は増大する。医療工程の改善という目的からは多施設での合同より2施設合同の方がより詳細な検討が可能である。普段パスの陰に隠れている院内システムの暗黙知を「見える化」することに有用である。さらには、単独施設でのパス大会では見えなかった問題点・改善点が明らかとなる。病院のおかれている医療圏が連携の形に影響を及ぼしており、地域中核病院を頂点としたグループを作りそれぞれのグループ間で競合、切磋琢磨しようとする意識が強すぎると中核病院同士の連携が困難になってしまう。柔軟な縦の連携、横の連携の構築が求められる。

  • 宮坂 萌生, 水野 篤, 戸田 浩子, 高橋 梨紗, 中村 加奈子, 山崎 麻里衣, 尾関 理恵, 岡村 大介
    2012 年14 巻2 号 p. 136-140
    発行日: 2012/06/22
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

     当院では、2007年11月から急性心筋梗塞患者に対して、短期入院クリニカルパスの運用を開始した(5日間、7日間パスの2種類)。パス適応患者の臨床経過の評価を目的として、2007年11月〜2010年10月に当院入院の急性心筋梗塞患者253名中のパス適応者176名を対象とし、基礎情報、患者教育施行数、心機能評価施行数、臨床経過について過去の記録から後ろ向きに解析・検討を行った。退院延期症例が70%を占めたが、多くは検査や患者教育、外来心臓リハビリのオリエンテーションなどのマイナーバリアンスであり、退院延期日数は平均1日であった。入院中死亡は1名(0.6%)、30日以内死亡は2名(1.2%)であり、クリニカルパス導入での安全性の問題はほとんどないと考えられた。患者教育、心機能評価施行数については5日間パスと7日間パス両群で十分に行われていた。以上より、短期入院クリニカルパスは安全に患者教育まで行えることが示された。今後、よりエビデンスに基づいた安全性の高い、実践的なクリニカルパスを作成していく必要がある。

  • 長尾 幸恵, 山本 靖子, 安保 真美, 近野 千鶴, 蒔野 恵, 正城 奈美, 中田 美樹
    2012 年14 巻2 号 p. 141-146
    発行日: 2012/06/22
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    目的:患者の医療への主体的な参加を促すために、従来の糖尿病教育入院の医療者用パスを患者に開示し、さらに患者自身が記録する欄を設け、患者と医療者が診療情報を共有できる患者参加型パスを開発・活用した。

    方法:アクションリサーチを用いて、患者参加型パスの開発・活用における患者および医療者の経験と評価を明らかにした。

    結果:患者参加型パス開発時には、医療者は患者の記録への期待と記録開示への不安があったが、活用する中でその不安は軽減した。患者参加型パスの活用により、患者は生活の振り返りができ、知識の理解が進むことを実感した。そして、医療者や自己の記録内容をきっかけに医療者との対話が増加し、その結果、患者は自分の医療に主体的に関わることができたことを実感し、入院生活が有意義で楽しかったと評価した。医療者は、患者と共通認識を持ち、共に治療に取り組むことができたと感じた。当初、すべての患者への活用は難しいと考えていたが、活用が進むにつれて、情報共有の有効性を認識し、他の患者に活用する価値があると考えるようになった。

    結論:患者参加型パスの開発によって、患者との情報共有に関する医療者の持つ抵抗感や期待が明らかになった。さらに、患者参加型パスの活用は、患者の主体的な医療への参加、医療者の情報共有に関する意識変化と患者の思いや考えに沿った医療の実践につながり、患者参加型医療の促進に有効であったといえる。

学会報告(第12回学術集会)シンポジウム1 クリニカルパスと臨床指標(質評価指標)の利活用による質向上活動
学会報告(第12回学術集会)シンポジウム2 院内パスのバリアンス分析
学会報告(第12回学術集会)シンポジウム4 チーム医療と多職種院内連携
学会報告(第12回学術集会)パネルディスカッション1 地域医療連携を考える
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