日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
実践報告
肺炎クリニカルパスによる肺炎球菌ワクチン接種の取り組み
杉野 安輝渡邊 大祐滝 俊一奥村 隼也三田 亮大田 亜希子髙木 康之岡 美穂武田 梓小林 英見
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 16 巻 2 号 p. 164-170

詳細
抄録

 人口の高齢化に伴い肺炎の入院患者数や死亡数が増加し、高齢者における肺炎予防対策の重要性が高まっている。今回は肺炎予防の観点から、23価肺炎球菌ワクチン接種に関する新たなプロセスを肺炎電子化クリニカルパス(肺炎パス)に組み込む改訂を行った。改訂肺炎パスでは入院当日に患者・家族から肺炎球菌ワクチンの接種歴を聴取し、ワクチン未接種者には肺炎球菌ワクチンを退院前に接種できる運用とした。2013年4月から8 月の間に改訂肺炎パスを適用した肺炎入院患者68例(市中肺炎初期パス35例、誤嚥性肺炎初期パス33例)を対象に、肺炎球菌ワクチンの接種状況やパスの課題について検討した。肺炎球菌ワクチンの接種歴が確認できた症例はそれぞれ62%と45%であった。両パス群ともに10例で退院前のワクチン接種が実施され、ワクチン未接種が確認できた接種対象患者におけるパスでのワクチン接種実施率はそれぞれ77%と100%であった。ワクチン接種による副反応は認められなかった。改訂肺炎パス導入後は入院における肺炎球菌ワクチン接種患者数の増加を認めた。肺炎で入院した患者・家族における肺炎球菌ワクチンの受け入れは良好であり、改訂肺炎パスによるワクチン接種の推進には、医師・看護師間でのパス運用ルールの徹底が課題であった。肺炎入院診療におけるワクチン接種プロセスのパス化は、ワクチン接種率向上の一助となり得ると考えられた。

著者関連情報
© 2014 一般社団法人日本クリニカルパス学会
前の記事 次の記事
feedback
Top