今後増大する認知症患者の医療需要に応えるには、医療支援体制を整える必要がある。生活機能維持を重視した治療・介護アプローチを実践する地域医療の要となるのは、かかりつけ医機能であり、その実践者はかかりつけ医である。そこで、かかりつけ医が認知症診療に際して困難と感じている項目を抽出し、その背景要因を明らかにする探索的研究を行うことを目的に、相模原市内の医師362名を対象に質問紙調査を行った。アンケートの回収数は129通、回収率35.63%であった。
かかりつけ医の多くが、相模原市内の認知症に関する医療・介護資源の充足度を十分ではないと感じていた。
逆紹介を肯定的に受け入れるためには、かかりつけ医に「認知症に関する相談、そのフォローの経験があること」、「認知症の在宅医療の経験があること」や「自分の患者であること」が要因となっていた。逆紹介を否定的に捉えるかかりつけ医は、「認知症診療に関すること」、「患者への療養指導」や「介護情報の聴取」に困難感を抱いていた。その背景要因をかかりつけ医は自らの知識不足と感じていた。一方、かかりつけ医認知症対応力向上研修の受講の有無で、「病状説明ができる「」中等度以上の認知症患者の診察ができる「」専門医への相談ができる」の3 項目に統計学的な有意差がみられた。また他疾患の地域連携クリニカルパスの経験値は、逆紹介の肯定的な受け入れを増やすことにつながっていなかった。
専門医に相談しやすい、かかりつけ医に対するサポート体制と地域スタッフを巻き込んだネットワークの構築が求められると考えられた。
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