2015 年 17 巻 2 号 p. 116-122
歯科医が認知症に関する知識や歯科治療を行ううえで困難と感じている項目を抽出し、その背景要因を明らかにする探索的研究を行うことを目的に、相模原市内の歯科医療機関345ヵ所を対象に質問紙調査を行った。アンケートの回収数は102通、回収率は29.6%であった。
本調査において認知症に関して相談を受けたことがある歯科医は40%、認知症患者の歯科診療をしている歯科医は60%だった。また歯科医にとって認知症に関する相談を受けることや認知症患者を歯科医として診療する経験は、認知症に関する知識を習得することへの動機付けとなり、認知症患者への助言・対応が不安なくできていることに繋がっていると推測された。困った時にかかりつけ医・専門医(病院医師)に相談できることが、歯科医が認知症患者を診察するうえでの一助になっていたが、歯科医は認知症に関する病状や受療状況等を聴取することができておらず情報共有に課題を認めた。
一方で、歯科医は患者家族、かかりつけ医、専門医(病院医師)、保険薬局薬剤師等に口腔ケアの重要性が認知されていないと感じていた。また、歯科医自身も認知症に関する知識不足を認識しており、双方に研修の必要がある。
顔の見える関係の構築と情報共有が喫緊の課題であり、認知症地域連携クリニカルパスを活用していくことが解決の一助になると考えられた。