2018 年 20 巻 1 号 p. 15-21
目的:急性期脳梗塞に対するrt-PA静注療法(tPA治療)はガイドラインで強く勧められる血栓溶解療法だが、脳出血が増えるため時間制限があり短時間に多くの評価を行う必要がある。当地域では多くの患者にtPA治療が行えるように救急隊が現場で発症(最終未発症)時刻を確認する急性期脳卒中パスを用いておりその効果を分析した。
方法:救急隊が急に発症した「脳卒中を疑う5症状」を確認して救急センターに通報し、看護師がパスを開始する。患者来院前に脳卒中医が呼ばれ、看護師が電子カルテのボタン一つで検査と画像をオーダーし、採血・点滴後に画像検査に行く。医師と看護師は手分けしてチェックリストを評価し、既往歴などから禁忌項目を発見した看護師や、CTで脳出血を見つけた放射線技師はパスを中止できる。このパスは禁忌を発見すれば誰でも止められるが、誰も止めなければtPA治療が検討される。当院のtPA実施率を山形県対脳卒中治療研究会と比較し、パスの年次推移とtPA治療が行われなかった理由を分析した。
結果:当院のtPA実施率は山形県の平均よりも高かった。近年は年間100回以上パスが開始され、tPA実施率は22%と高くないが、脳卒中の割合は86%と比較的高く「脳卒中を疑う5症状」の妥当性が示された。tPA治療が実施されない理由は急速改善と軽症が最多であった。
考察:急性期脳卒中パスの利用によって制限時間内の多くにtPA治療の適応を検討できる意義が高いと考える。