日本クリニカルパス学会誌
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20 巻, 1 号
日本クリニカルパス学会誌 第20巻 第1号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
研究報告
  • 八木 麻里子, 藤野 晋, 丹羽 智, 野路 善博, 邑井 洸太, 高嶋 勇志, 馬渕 智仁, 山口 正人, 青山 隆彦
    2018 年 20 巻 1 号 p. 5-11
    発行日: 2018/03/12
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

     当院では、肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症パスの薬剤は、既報のとおり非経口間接型Xa阻害薬である「フォンダパリヌクス皮下注+ワルファリン内服」を用いていたが、2014年9月よりエドキサバンが保険償還されたことを受けてパス改訂を行い「エドキサバン内服」へと標準治療を変更した。当院で2014年9月~2015年7月の間にエドキサバン投与を開始した35例と、2011年4月以降ワルファリン投与を開始した24例に対して、治療効果、有害事象発生、在院日数について比較検討した。治療効果に関して、エドキサバン群、ワルファリン群ともに治療前後でD-dimerは有意に低下し、かつ造影CTでの血栓量も減少し、同等の治療効果であった。また、出血性合併症・死亡を指標とした有害事象においても、エドキサバン群、ワルファリン群とも同等であった。在院日数はエドキサバン群でワルファリン群と比較し有意に短縮された(10.9±4.7日対18.6±7.3日、p=0.00014)。今回のパス改訂により、治療効果、有害事象とも同等であり、在院日数短縮が可能となった。加えて、入院翌日より経口薬のみでの治療が可能となり治療内容の単純化も得られた。

実践報告
  • 佐藤 和彦, 遠藤 広和, 丸谷 宏
    2018 年 20 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2018/03/12
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    目的:急性期脳梗塞に対するrt-PA静注療法(tPA治療)はガイドラインで強く勧められる血栓溶解療法だが、脳出血が増えるため時間制限があり短時間に多くの評価を行う必要がある。当地域では多くの患者にtPA治療が行えるように救急隊が現場で発症(最終未発症)時刻を確認する急性期脳卒中パスを用いておりその効果を分析した。

    方法:救急隊が急に発症した「脳卒中を疑う5症状」を確認して救急センターに通報し、看護師がパスを開始する。患者来院前に脳卒中医が呼ばれ、看護師が電子カルテのボタン一つで検査と画像をオーダーし、採血・点滴後に画像検査に行く。医師と看護師は手分けしてチェックリストを評価し、既往歴などから禁忌項目を発見した看護師や、CTで脳出血を見つけた放射線技師はパスを中止できる。このパスは禁忌を発見すれば誰でも止められるが、誰も止めなければtPA治療が検討される。当院のtPA実施率を山形県対脳卒中治療研究会と比較し、パスの年次推移とtPA治療が行われなかった理由を分析した。

    結果:当院のtPA実施率は山形県の平均よりも高かった。近年は年間100回以上パスが開始され、tPA実施率は22%と高くないが、脳卒中の割合は86%と比較的高く「脳卒中を疑う5症状」の妥当性が示された。tPA治療が実施されない理由は急速改善と軽症が最多であった。

    考察:急性期脳卒中パスの利用によって制限時間内の多くにtPA治療の適応を検討できる意義が高いと考える。

  • 脇阪 美帆, 阿部 恒平, 森田 光治良, 森田 敦子, 設樂 理砂, 大島 愛子, 近藤 穂尭, 鈴木 千晴
    2018 年 20 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 2018/03/12
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    背景:当院心血管系集中治療室(ICCU)で行った冠動脈バイパス術(CABG)クリニカルパス逸脱要因の調査で、在院日数延長因子として「せん妄」が抽出された。ICCUでは看護師がCAM-ICUを用いてせん妄を評価し、心療内科医とともに早期治療を行っている。術後せん妄の有無により、クリニカルパスに基づいた治療計画が進むことが可能であるか調査し、「せん妄がない」という項目が術後のアウトカムとして妥当であるか検討した。

    方法:2014年7月から2015年7月に予定された心臓大血管術を施行した患者を対象とした。患者記録から情報収集し、せん妄の発症日やせん妄発症患者の特徴を調査し、クリニカルパスで設定されたとおりの治療が継続できていたかどうかを調査した。

    結果:患者数83名のうち、せん妄発症者は13名(15.6%)であった。せん妄発症患者では慢性腎不全患者が多く、人工心肺時間、術後ICCU滞在日数、術後在院日数が優位に延長していた。せん妄発症者13名のうち、術後3 日目の時点でせん妄を認めなくなった8名においては、全例術後20日以内の退院が可能であった(p=0.0008)。

    結語:せん妄の有無を評価することは、クリニカルパスに沿って治療を行えるかを判断する重要な指標となると考えられ、集中治療室退室予定である術後3日目に「せん妄がない」をアウトカムとして設定することは術後在院日数を推定するうえで有用である。

  • 青木 静江, 鈴木 智裕
    2018 年 20 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 2018/03/12
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    徐脈性不整脈050210xx97000xの入院期間Ⅱは11日であり、当院のペースメーカー移植術(PMI)パスは10日、ペースメーカー交換術(Ge交換)パスは9日の設定であったが、平成26年4月からの2年間に同DPCに該当したパス適用患者の平均在院日数は15.0日であった。そこで、院内の現状把握を行ったうえでDPCデータを用いたベンチマークによりパス日数短縮の必要性を検討した。なお、分析・検討にあたり、同DPCに該当した患者を術式と予定または緊急入院の組み合わせにより3群に細分類し、患者の状態や治療内容を絞り込んだ。その結果、Ge交換パスの日数をPMIパスより短く設定することが全体の平均在院日数の短縮に有効なこと、緊急入院と比べて状態が安定している予定入院の患者でより効率的な医療を目指し、パス日数を可能な範囲で短く設定する必要があると考えた。これらを循環器内科と検討し、現状の診療体制でのパス日数の大幅な短縮は困難だが、両パスとも短縮は可能と判断し8日に改訂した。パス日数の検討にDPCデータを用いる際には、一分類で多様な患者の状態や治療内容を含むDPCがあることを考慮する必要があり、表面的な数値のみを参考にパス日数を決定した場合、本来必要な治療日数に過不足のあるパスが作成される可能性がある。

  • 西本 麻衣, 馬塲 庸平, 松本 裕子, 清水 潤三
    2018 年 20 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2018/03/12
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    目的:頸動脈ステント術(以下、CAS)は、低侵襲な手術であるが、術後合併症管理のため、当院では術後14日間の入院期間が設定されている。しかし、術後早期退院を望む患者が多く、合併症管理の必要性や退院指導について、入院期間の中で効果的な患者指導が行われていなかったことが原因だと考えられた。そこで、患者教育という観点からクリニカルパス(以下、パス)運用初期における問題点を整理し、見直しを行った。

    方法:CAS実施患者11名(2013年3月~2015年10月)のバリアンス分析、個別の症例についての記録調査を実施した。

    結果:バリアンス結果は、脳梗塞0件(0%)、過灌流現象2件(16.7%)、徐脈性低血圧が3件(25%)、穿刺部出血3件(25%)であった。記録調査の結果は、術後安静・禁煙を守れない、また、モニター管理や点滴が終了すると「早く帰りたい」という患者がいた。医師・看護師・薬剤師と術後・退院指導に関するアウトカムを見直し、看護師が統一した患者指導を実践できるようパンフレットを作成し、アウトカムと関連付け、指導開始時期を詳細に設定した。

    考察・結論:各指導の実施時期を見直し、アウトカムを設定することで、スタッフは適切なタイミングで指導ができた。今後の課題は、栄養士や外来看護師と連携し、チーム医療としてパスの質の向上と改善を目指し、PDCAサイクルで継続的に評価していきたい。

  • 下條 隆, 木下 仁志, 平野 友恵, 早崎 会里果, 山本 英治, 森 秀法
    2018 年 20 巻 1 号 p. 41-48
    発行日: 2018/03/12
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    目的:我々は、肺炎診療の標準化のため、ガイドラインに準拠した抗菌薬を選択可能なパスパッケージとしてのクリニカルパス(パス)を作成した。今回我々は、パスの適用群と非適用群で、DPCデータの解析で肺炎抗菌治療におけるパスの有用性が実証されるか検証した。

    方法:DPCコード上「肺炎・急性気管支炎・急性細気管支炎」に分類された患者を、DPCデータを用い、パス適用群・非適用群で比較検討した。

    結果:患者の年齢・性別・入院日数・死亡率に、適用群・非適用群で有意差は認めなかった。一方、A-DROPシステムで判定した重症度は適用群で有意に重症の割合が多かった。また、適用群では中等症で有意に入院日数が少なかった。適用群のほうが1日当たりの請求金額が高かった。

    考察:当院の肺炎診療は複数の内科系診療科が受け持つため、診療の標準化に難渋している。症例数の多い肺炎診療では解析症例数も膨大になるなど、パス化の効果が判定しにくい。今回DPCデータに基づき、パス適用群・非適用群を比較することで、パスの有用性が確認できたと考える。

    結論:当院で作成したパッケージとしての肺炎パスは、DPCデータの解析上当院の肺炎診療に有用であると考えられた。

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