2018 年 20 巻 1 号 p. 22-27
背景:当院心血管系集中治療室(ICCU)で行った冠動脈バイパス術(CABG)クリニカルパス逸脱要因の調査で、在院日数延長因子として「せん妄」が抽出された。ICCUでは看護師がCAM-ICUを用いてせん妄を評価し、心療内科医とともに早期治療を行っている。術後せん妄の有無により、クリニカルパスに基づいた治療計画が進むことが可能であるか調査し、「せん妄がない」という項目が術後のアウトカムとして妥当であるか検討した。
方法:2014年7月から2015年7月に予定された心臓大血管術を施行した患者を対象とした。患者記録から情報収集し、せん妄の発症日やせん妄発症患者の特徴を調査し、クリニカルパスで設定されたとおりの治療が継続できていたかどうかを調査した。
結果:患者数83名のうち、せん妄発症者は13名(15.6%)であった。せん妄発症患者では慢性腎不全患者が多く、人工心肺時間、術後ICCU滞在日数、術後在院日数が優位に延長していた。せん妄発症者13名のうち、術後3 日目の時点でせん妄を認めなくなった8名においては、全例術後20日以内の退院が可能であった(p=0.0008)。
結語:せん妄の有無を評価することは、クリニカルパスに沿って治療を行えるかを判断する重要な指標となると考えられ、集中治療室退室予定である術後3日目に「せん妄がない」をアウトカムとして設定することは術後在院日数を推定するうえで有用である。