我が国では1990 年代からクリニカルパス(以下、パス)の開発と普及が始まった。多くは紙ベースでの運用だったが、パスの質改善や効率化という効果をもたらす前に、2000 年代から電子カルテが導入され始めた。したがってパスの概念整理がなされないまま電子化が進められた。バリアンス収集と分析を効率よく進めるには用語の標準化が必要で、これに対応すべくアウトカム(O)とアセスメント(A)に用いられる観察項目を整理したBasic Outcome Master(BOM)が2011 年に上梓された。有史以来使われてきた紙は確かに便利だが情報化時代には新たな概念を必要とした。パスではO とA、これらを判断し達成するために必要な仕事タスク(T)という用語が使用されてきた。日本医療情報学会と当学会の合同委員会では、これらを電子的に処理するために、それぞれ関連付けられたO-A-T を一つの診療の基本単位と考え、この原則に沿って診療プロセスを構築し実測値をデータとして抽出するというシステムを提唱した。この基本単位をOAT ユニットと呼び、これを組み合わせることでパス作成、バリアンス自動判定と表示、バリアンス自動収集と分析および可視化が容易に行える。もちろんパス以外のデータとの統合には検査や薬剤のマスター整備や、リポジトリの作成などが必要だが、こうしたことをクリアできれば臨床研究や新薬開発、次世代電子カルテ開発などに大きく期待できる。