日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
実践報告
人工股関節全置換術の動画を用いた患者用パスの作成と効果
上田 将之赤田 直軌西村 美希武田 康平石田 哲士本城 誠川那辺 圭一山本 秀和
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2020 年 22 巻 3 号 p. 158-162

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抄録

【目的】当院は、人工股関節全置換術(total hip arthroplasty、以下、THA)の3週間クリニカルパス(以下、パス)を用いている。今回、疾患や治療内容の理解を深め周術期医療や退院後生活、脱臼への不安を軽減することを目的に、患者用パスに則った教育動画(以下、動画パス)を作成し、タブレット端末として希望者に貸し出した。動画パスの紹介と効果を検証したので報告する。

【方法】動画パスは、「手術や脱臼の知識」、「病棟生活」、「理学療法」、「作業療法」、「自主練習」から構成され、術前~術後日数に応じた内容を音声動画にて解説する。術前から退院まで貸し出し、ベッドサイドで好きな時間に好きな内容を選んで視聴できる。2017年10月~2018年3月にTHAを受けた97名を対象に、アンケート調査を実施した。

【結果】アンケート調査の有効回答は90名で有効回答率は92.8%であった。動画パスの使用率は68.9%で、平均年齢は使用者64.3±10.3歳と非使用者70.1±12.8歳で有意差を認めた。動画パスは、「手術の不安軽減」に約73%、「入院生活の不安軽減」に約85%、「退院後生活の不安軽減」に約92%、「脱臼の不安軽減」に約95%が役立ったと回答した。

【考察】動画パスの使用率は約70%とおおむね受け入れられた。タブレット端末は、70歳以上の高齢者は使用しにくい傾向があった。アンケート調査結果から、動画パスは特に退院後生活や脱臼の不安軽減に有効である可能性が示唆された。

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© 2020 一般社団法人日本クリニカルパス学会
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