クリニカルパス(以下、パス)を導入してリスクマネジメントの向上を達成したとする施設はかなり少ない。そこで、パス適用によって医療事故が減少したかどうかを検証した。対象は2013年度から2018年度までの入院患者に発生した医療事故報告で、転倒・転落は対象外とした。方法は、医療事故をパス適用中と非適用中に区別し、それぞれの医療事故発生頻度を算出した。また、医療事故内容を分類し比較した。結果は、パス適用中の医療事故発生頻度は0.001460件/人・日、非適用中事故は0.002714件/人・日であり、有意にパス適用中事故が少なかった。年度ごとの変化をみると、若干の減少傾向がみられ、パス適用率が大幅に増加した2016年度に医療事故発生頻度はパス適用中、非適用中とも大きく減少した。また、いずれの年度もパス適用中事故発生頻度のほうが低かった。医療事故内容別にみると、差はなかった。以上の結果より、パスを導入したことで短絡的に医療事故が減ったわけではなく、パスの内容や運用方法の改善といった日々の努力、長年の活動によるパスの風土化により、病院全体に標準化、チーム医療が浸透してきている結果とも考えられる。結論として、パスは医療事故減少を通して、医療安全に寄与している可能性が示唆された。