日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
実践報告
ID-Linkを用いた加賀脳卒中地域連携クリニカルパス運用が業務効率化に及ぼす影響
池永 康規
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 22 巻 3 号 p. 176-181

詳細
抄録

 石川県には診療情報を地域の施設間で共有することができるID-Linkが導入されている。加賀脳卒中地域連携クリニカルパス(以下、加賀パス)をID-Linkに組み込んで運用した後に、看護師記録業務完了時刻が短縮しているかについて検証したので報告する。

 ID-Linkによる加賀パス運用前の2014年1月から2015年12月まで当院に転院し退院した患者、および転院当日に患者を担当した看護師の属性(以下、前ID-Link群)を、ID-Linkによる加賀パス運用後の2017年1月から2018年12月までに転院し退院した患者、および転院当日に患者を担当した看護師の属性(以下、後ID-Link群)と比較した。加賀パス閲覧可能時刻、看護師記録完了時刻を両群間で比較し、ID-Linkによる加賀パス運用の効果を検証した。

 前ID-Link群102例、後ID-Link群101例が対象となった。後ID-Link群で患者年齢が高く合併症が多く男性看護師が多かった。ID-Link使用有無と加賀パス閲覧可能となった時刻、および加賀パス閲覧可能となった時刻と看護師記録完了時刻には統計学的有意な相関が存在した。ID-Link使用有無、患者年齢、合併症数、看護師の男女比を独立変数として看護師記録完了時刻を従属変数としたステップワイズ線形重回帰分析では、患者年齢、合併症数、看護師男女比が棄却されID-Link使用有無が独立因子として寄与し、加賀パスをID-Linkを用いて使用することが約83分、患者転院時看護師記録業務完了時刻を短縮していた。連携パスをID-Linkを用いて地域施設間で運用することは、看護師の業務効率化に貢献できる可能性が高いと考えられる。

著者関連情報
© 2020 一般社団法人日本クリニカルパス学会
前の記事 次の記事
feedback
Top