2002 年 4 巻 2 号 p. 35-40
われわれは1999年1月から人工股関節置換術(THR)に対してクリニカルパスを実施し、これまでリハビリテーションメニューの変更、チャートの改良などを含めて2度の改良を行った。今回、パスの改良とその効果について調査したので報告する。対象は変形性股関節症、大腿骨頭壊死、慢性関節リウマチに対してTHRを施行し、パスを用いた75例、75関節である。手術時平均年齢は61.9歳、使用人工股関節はセメントもしくはハイブリッドで固定し、退院基準はステッキ歩行もしくは片松葉杖歩行が可能な状態であることとした。パス改良の時期に応じて第一~三期とした。術後退院までの予定日は第一期では35日、第二期以降は28日とした。チャートは改良の度ごとにより見やすく分かりやすいようにし、第一期、第二期では指示用と患者用に同じチャートを使っていたのに対し、第三期では患者が理解しやすいように患者専用のチャートを作製した。術後から退院までの期間は平均で第一期48.4日、第二期39.2日、第三期32.9日であり、改良の度に入院期間は有意に短縮した(p < 0.02)。1例のみ転院となったが、残りは全例自宅に退院した。退院予定日からの遅れは第二期から第三期へ有意に短縮した(p < 0.05)。クリニカルパスの改良によってチーム医療としての医療の質が向上し、その結果として入院期間が短縮したと考えられた。