2006 年 8 巻 2 号 p. 161-163
近年医療の世界でもIT化が急加速している。しかし、当院のような中小規模の病院にとって巨額を投じて電子カルテ等の医療情報システムを導入することは容易ではない。そこで我々はファイルメーカーPro(以下FM)を基盤として診療情報支援システムを構築することとした。またFMを通じてPACSや血液検査サーバー、医事会計システムやオーダリングシステム等の病院システムと連携をとることができた。
FMデータベース(DB)はマスターDBと運用DBより構成されている。マスターDBは患者属性、医薬品情報、病名などから構成され、運用DBファイルはクリニカルパス、入退院管理、病歴ファイル、検査予約、画像レポート、手術予定表など200余りのファイルより構成されている。
医事会計システムとは従来から3分間隔で患者属性を取得し、診療情報支援システムの患者属性DBに受け渡しを行う外部プログラムを独自に開発し、患者属性情報の一元化を実現している。
現在医事会計システムと連携をとっているのは、栄養指導関連、リハビリ関連、放射線検査、内視鏡検査、生理検査である。独自のインターフェースサーバを使用し、オーダリングシステム側からのインターフェースサーバへのデータの受け渡しは、ODBC接続により実現できた。
オーダリングシステムの構築により医事会計システムが連携され、実施請求の迅速化とコスト漏れ対策が可能になると共に、それぞれの業務の運用の見直しができた。当院で稼働しているFMを用いた診療情報支援システムはいわゆる電子カルテと同列に議論される性質のものではないが、複数のシステムを柔軟に連携させることが、理想的な病院システムであると思われる。FM自身が診療情報支援システムとして働き、それを通じて他の病院システムと連携をとることは広義の電子カルテシステムと言っても過言ではない。今後は、薬剤、注射等のオーダリングの実現を目指し、入力方法、運用方法についてさらなる検討を加え、独自開発によるフルオーダリングシステムの構築を目指していきたい。FMシステムには柔軟性があり、他施設でも安価に導入できる点で中小規模病院向けのシステムの救世主となりうる可能性がある。