日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
8 巻, 2 号
日本クリニカルパス学会誌 第8巻 第2号 (May.31.2006)
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
総説
  • ―すべては医療の質の向上のために―
    岩﨑 榮
    原稿種別: 総説
    2006 年 8 巻 2 号 p. 101-107
    発行日: 2006/05/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     病院が提供している医療の質を評価しているとする病院機能評価(以下機能評価という)であれ、クリニカルパス(以下パスという)であれ、その目指すものは医療の質改善・向上であることに変わりはない。

     質向上のためには、現在の業務のやり方を改善すればよいことはわかっている。さて、改善をどのように進めていけばよいのであろうか。改善のためには目標や標準化をはかることが必要である。こと現代医療の場でもはや医師1人でやれるものは何1つとしてない。チーム医療が必要である。そこで組織的に組織を挙げて改善を進めていくことが求められる。これまでも、TQM(Total Quality Management)、TQC(Total Quality Control)、QMS(Quality Management System)の概念が病院の医療の質向上のために導入されてきた経緯がある。

     これらは残念ながら表層的な導入に過ぎなかったともいわれている。

     病院が機能評価を受けることも最近では「認定」を得ることだけが目的となっているという批判もある。本当は病院が機能評価を受けることで病院の医療の質改善・向上について討議され考えることで、結果として、その病院が提供する医療の質が改善し向上すればよいわけである。

     一方、パスにしても、ただ単に在院日数の短縮化や効率性のみを追求するのではなく、病院マネジメントの1つのツールとして、自院においてパスの1つ1つを作る過程でチーム医療、患者中心の医療、情報の共有化、医療の標準化が達成されていくことで病院マネジメントに変革がもたらされればよいことである。

     機能評価項目4.1.5.1、4.2.6.3ではパスが求められ、バリアンス分析がなされているかどうかでその項目が評価される。しかしこれらの項目が達成できたから医療の質改善に寄与したかどうかのエビデンスは必ずしもない。最近、「患者状態適応型パス」(飯塚悦功ら)が提唱され、厚労省の来年度の「医療保険制度体系に関する改革」の中でも「医療連携パス」が重視される施策が示されている。

     機能評価、パスいずれも、我が国における医療の質向上に寄与していることは間違いない。今後は具体的なエビデンスを示していくことが課題となる。

原著
  • 笹川 尚, 島倉 聡
    原稿種別: 原著
    2006 年 8 巻 2 号 p. 111-115
    発行日: 2006/05/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     整形外科疾患に対するクリニカルパス(以下パス)の利用度は高いが、治療・退院時アウトカムは同一ではないことは多く経験する。当院では患者用・医療者用パスに加えて、リハビリテーション(以下リハビリ)用パス「リハビリ・チャート」を作成し、退院時やリハビリ終了時のアウトカムとして使用しているので報告する。

     リハビリ・チャートは立位や歩行などある程度の目標別に何段階かの活動レベル(以下ステップ)を設定し、各ステップには中間アウトカムを設けて、それを達成することにより次のステップに進むもので、患者に合わせてどのステップまでを退院時のリハビリアウトカムにするか、最終的なリハビリのゴールにするかを決めている。

     このリハビリ・チャートを使用することにより、医療者間や患者との相互理解を深めることができるようになった。また中間アウトカムや退院時・終了時アウトカムの妥当性の検討もしやすくなった。

     今後は検討を重ねて、よりよいリハビリ・チャートを作成し、相互理解を深めていけるようにしていきたい。

  • ―入院時患者問題解決型アウトカム思考―
    勝尾 信一, 坪川 小百合
    原稿種別: 原著
    2006 年 8 巻 2 号 p. 117-124
    発行日: 2006/05/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     当院のクリニカルパスは、オールインワンパスの形式で、過去のデータの標準化を行って作成している。そして、どのような項目を日々の達成目標(アウトカム)にするか、日々の行為に入れるのかを決めるのに、アウトカム設定シートを開発した。アウトカム設定シートは6種類の用紙からなる。まず、病態から考えて入院時に持っているであろう問題点を考え、それを達成目標の表現に置き換える。そして、それぞれの達成目標に対して、基準、基準を判断するためにすること、この目標達成以前に達成されているべきこと、達成するために行うこと、この目標で発生する問題を検討する。そこから新たな達成目標を導き出し、その達成目標に対しても同様の検討を繰り返す。こうして得られた達成目標と基準を判断するためにすることに対して、過去のカルテからデータを収集して標準化する。その結果を時系列に並べて、オーバービューシートが完成する。この考え方を、入院時患者問題解決型アウトカム思考と呼んでいる。このシートを使用して、片側人工膝関節全置換術のクリニカルパスを作成した。達成目標として挙げられたものは231項目、判断するためにすることは172項目、これらの項目以外にクリニカルパス作成に必要と考えたものが72項目あり、計475項目のデータを収集、標準化した。

  • 相原 衣江, 川村 研二, 松田 紗矢香, 井上 由紀子, 山野 朋江, 田渕 順子, 清水 由美子, 森田 展代, 近澤 逸平, 森山 学 ...
    原稿種別: 原著
    2006 年 8 巻 2 号 p. 125-132
    発行日: 2006/05/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

    【目的】前立腺癌は近年増加傾向にあり、前立腺全摘除術がその標準治療のひとつとされている。今回、小切開前立腺全摘除術を標準化する目的でクリニカルパスを導入したので報告する。

    【対象と方法】対象は,早期前立腺癌に対して前立腺全摘除術を施行した20例である。治療の標準化として歩行と食事の開始、尿道カテーテル抜去、退院日等のアウトカムを定めた。また、患者のアンケート調査を行い、満足度の調査を行った。

    【結果】このアウトカム志向のクリニカルパスを使用した時の達成率は、術後2日目に歩行可:90%、術後7日以内に尿道カテーテル抜去可能:85%、術後10日以内に退院:85%であった。3人の患者は退院が延期となったが、その理由は、尿閉、創感染、膀胱尿道吻合不全であった。尿失禁は術後1ヵ月で徐々に改善し、パッドを使用していないと定義した時、術後3ヵ月で88.9%の患者のパッドが不要となった。アンケート調査では、90%の患者が今回の手術と入院治療に満足であると回答した。

    【結論】クリニカルパスは患者により良いサービスと質の高い医療を提供するために必要なツールであり、歩行と食事の開始、尿道カテーテルを抜去する日、退院日などを定めたアウトカム志向のパスを作成し、アウトカムの達成率を検討する必要があると考えた。

実践報告
  • ―NSTの役割―
    伊東 七奈子, 原嶋 幸子, 小川 哲史, 加藤 潤子, 大友 崇, 立川 厚子, 前島 和俊, 飯塚 春尚, 小野里 康博, 前田 陽子, ...
    原稿種別: 実践報告
    2006 年 8 巻 2 号 p. 135-140
    発行日: 2006/05/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     今回、NSTによる栄養ケアマネジメントを組み入れたアウトカム志向のPEG導入時パスを作成し、そのバリアンス分析を行った。2003年7月より2004年8月までにパスを使用した症例は、44例であった。年齢は16~93歳(平均:74)で、男性が18例、女性が26例であった。基礎疾患は、脳血管障害が36例と最も多かった。バリアンスを除く症例では、全例、中間アウトカムと最終アウトカムを達成することができた。バリアンスは44例中6例(13%)に認めた。内訳は、機械的合併症が4例、消化器合併症が2例であった。代謝性合併症やその他のバリアンスはなかった。機械的合併症のうち、軽度の誤嚥性肺炎を認めた2例は、経腸栄養剤の半固形化と、PEGを利用した空腸痩への変更でそれぞれ軽快した。PEG留置部から出血した1例は、静脈性のoozingを認め、緊急内視鏡で止血しえた。自己抜去の1例は、同日再挿入しえた。消化器合併症の2例は腹部膨満で、いずれも腸蠕動促進剤の投与で改善し軽快した。6例ともパス脱落例はなく、全例経腸栄養を継続することができた。

     NSTによる栄養ケアマネジメントをパスに組み込み、各々、具体的な合併症をアウトカムに設定したことで、抗菌薬の適正投与や、適切な栄養療法の実施と評価が標準化された。その結果合併症の予防や早期発見が容易となり、バリアンスに対する適切な対処が可能となった。

  • 辻本 博明, 宇野 喜代美, 山中 英治
    原稿種別: 実践報告
    2006 年 8 巻 2 号 p. 141-145
    発行日: 2006/05/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     当院手術室では、平成14年5月からクリニカルパス(以下パス)を導入した。最初に作成したパスは、「開腹手術パス」で、以前に使用していた術中記録に必要な項目を追加しただけのものであり、アウトカムの設定は行わなかった。

     しかし、手術室にとって「患者の安全」「滅菌物や器械の運用」などについてのアウトカム設定が必要と考えたため、平成15年4月にアウトカムの設定を行い、同時にフォーマットも変更した。

     次に病棟と手術室との情報の共有化を目的に、術中期を含む周手術期パス(以下スルーパス)を作成した。スルーパスにより、情報の共有化ができただけでなく、記録の重複がなく、総合的な治療経過の把握と記載が可能な包括されたパスとなった。

     アウトカム設定と同時に、バリアンス記載を開始したが「手術室で発生するバリアンスに該当するコードがない」などの原因で記載がすすまなかった。そのため、手術室独自のバリアンス項目とバリアンスコードの設定を行った。設定は安全管理に重点をおき、クリティカルインディーターを網羅し、バリアンス発生時期をコードで判別できるように工夫した。平成16年5月には「全身麻酔パス」「脊椎くも膜下麻酔パス」を追加し、全手術症例でパスを適応することができた。以上の経緯についての検証をした。パスは導入当初の目的を達成し、バリアンス分析によりパスの改訂・安全についてのマニュアルの改訂ができるシステムが整った。

  • 小林 利彦
    原稿種別: 実践報告
    2006 年 8 巻 2 号 p. 147-150
    発行日: 2006/05/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     静岡県内38病院で腹腔鏡下胆嚢摘出術(以下LC)のクリニカルパス(以下パス)に関するアンケート調査を行った。回答があった当院を含む22施設のパス導入時期は1998-2005年であり、既に13施設で内容の改訂が行われていた。実際に書式提供があった17施設のパス内容として、適応外基準の明記は4/17施設、全在院日数は5-11日(平均6.9日)、退院日は術後3-8日目(平均4.8日目)、術後点滴抜針は第1病日7施設、第2病日7施設、第3病日3施設であり、点滴抗生物質の種類は第一世代(CEZ)7施設、第二世代(CMZ、CTM)3施設、第三世代(FMOX、CTRX)2施設(残り5施設は医師の裁量)、そして抗生物質の終了時期は第1病日5施設、第2病日6施設、第3病日2施設、第5病日1施設であった。記録面でのアウトカム記載は14/17施設でみられたが、アセスメントツールが明記されていたのは9/17施設であった。また、パス書式が単なる工程表と考えられたものが6施設、工程表にチェックボックスが追加されたものが6施設、診療録2号用紙を意識したものが5施設であった。LCでは術後管理の均質化が比較的容易と考えられたが、静岡県内病院のパス内容には予想外のばらつきがあった。その理由として施設間の情報交換不足が考えられ、診療の標準化やベンチマーキング作業が遅れていることが示唆された。従って、今後パス大会(展示)等での相互評価が必要と思われた。

学会報告(第6回学術集会) 教育講演6
  • ~パス活動10年を振り返って、そしてこれから~
    飛野 幸子
    原稿種別: その他
    2006 年 8 巻 2 号 p. 153-156
    発行日: 2006/05/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     クリニカルパスに積極的に参画することで、薬剤師業務が明確化されるとともに、広がりが見られる。当院では、術後感染予防投与抗菌薬の標準化から感染管理が、輸液の標準化から栄養管理が、化学療法パスから腫瘍チームにおける安全管理が活発になっていった。また、多職種と協働することで、チーム医療が促進される。さらに、薬剤経済学的な面からもパスは有用なツールであり、病院経営にも貢献できる。

学会報告(第6回学術集会) シンポジウム2 医療者が作成する医療用ソフトの現状と将来性
  • 松波 和寿, 川口 雅裕
    原稿種別: その他
    2006 年 8 巻 2 号 p. 157-159
    発行日: 2006/05/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     医療におけるIT化が進められているが、電子カルテだけがIT化ではない。当院ではオーダリングシステム、PACSさらに市販データベースソフトであるファイルメーカープロを用いて診療情報システムを構築している。その中にはクリニカルパス機能も組み込まれている。パス作成機能、修正機能、発行および記録、各種統計、バリアンス集計なども行える。このシステムは日々進化し続けていて、日常診療に欠かせなくなっている。DPC関連も対応していて、各種指標も集計可能である。

     市販ソフトならではの欠点、長所はあるが対費用効果の高いシステムである。

  • 中村 徹, 櫃石 秀信, 原田 隆行
    原稿種別: その他
    2006 年 8 巻 2 号 p. 161-163
    発行日: 2006/05/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     近年医療の世界でもIT化が急加速している。しかし、当院のような中小規模の病院にとって巨額を投じて電子カルテ等の医療情報システムを導入することは容易ではない。そこで我々はファイルメーカーPro(以下FM)を基盤として診療情報支援システムを構築することとした。またFMを通じてPACSや血液検査サーバー、医事会計システムやオーダリングシステム等の病院システムと連携をとることができた。

     FMデータベース(DB)はマスターDBと運用DBより構成されている。マスターDBは患者属性、医薬品情報、病名などから構成され、運用DBファイルはクリニカルパス、入退院管理、病歴ファイル、検査予約、画像レポート、手術予定表など200余りのファイルより構成されている。

     医事会計システムとは従来から3分間隔で患者属性を取得し、診療情報支援システムの患者属性DBに受け渡しを行う外部プログラムを独自に開発し、患者属性情報の一元化を実現している。

     現在医事会計システムと連携をとっているのは、栄養指導関連、リハビリ関連、放射線検査、内視鏡検査、生理検査である。独自のインターフェースサーバを使用し、オーダリングシステム側からのインターフェースサーバへのデータの受け渡しは、ODBC接続により実現できた。

     オーダリングシステムの構築により医事会計システムが連携され、実施請求の迅速化とコスト漏れ対策が可能になると共に、それぞれの業務の運用の見直しができた。当院で稼働しているFMを用いた診療情報支援システムはいわゆる電子カルテと同列に議論される性質のものではないが、複数のシステムを柔軟に連携させることが、理想的な病院システムであると思われる。FM自身が診療情報支援システムとして働き、それを通じて他の病院システムと連携をとることは広義の電子カルテシステムと言っても過言ではない。今後は、薬剤、注射等のオーダリングの実現を目指し、入力方法、運用方法についてさらなる検討を加え、独自開発によるフルオーダリングシステムの構築を目指していきたい。FMシステムには柔軟性があり、他施設でも安価に導入できる点で中小規模病院向けのシステムの救世主となりうる可能性がある。

  • ~アクセスログ管理法などを中心に改善策の提案~
    佛坂 俊輔, 野口 康男
    原稿種別: その他
    2006 年 8 巻 2 号 p. 165-166
    発行日: 2006/05/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     ファイルメーカーProはその使い勝手の良さから個人の医療データベースを作成するツールとして使用している医療関係者は多い。しかしながら、多くのユーザーが多くの端末からアクセスできるような環境下において、業務に使用できる程度のセキュリティを確保したシステムをファイルメーカーProのみで作成するためには、同ソフトウェアのセキュリティ面の脆弱性を理解し、これを補うための経験が要求されることも事実である。

     ファイルメーカーPro内蔵のアクセス権設定では管理が繁雑となる多人数の様々なアクセスレベル設定、あるいは標準的には用意されていないレコードごとのアクセス設定やセキュリティ管理の重要な要素となるアクセスログを残す方法などを、同ソフトウェアの内蔵された機能のみを応用し、当院で運用しているヒヤリハット・オンラインシステムにおいて実際に使用しているログファイルの作り方の事例を中心に、セキュリティを高める方法を述べる。

  • 蒲生 真紀夫
    原稿種別: その他
    2006 年 8 巻 2 号 p. 167-170
    発行日: 2006/05/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     近年、病院情報システムが急速に普及しつつあるが、医療現場が必要とする診療支援・分析機能に関して満足できるレベルのシステムは少なく、多くの施設が市販データベースを用いた診療支援ソフトを開発運用している。本稿では我々がファイルメーカープロを用いて作成し、ネットワーク上で運用している各種データベースファイルのうち、病院全体に横断的にかかわるアセスメント・分析機能について紹介する。自作DBは診療現場が必要な情報を収集し分析可能な点で優れているが、基幹医療情報システムとの連携が今後の課題である。

  • 若宮 俊司
    原稿種別: その他
    2006 年 8 巻 2 号 p. 171-175
    発行日: 2006/05/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     医療者が作成するソフトウェアは専門家の手によるものではないため、作成に使える時間、技術的な問題など、様々な点で限界がある。汎用データベースソフトを用いての作成はその点で作成が容易に行えるツールであるが、作成する内容により、何をツールとして用いるのかには向き不向きがある。汎用データベースソフトを用いた医療用ソフトの他に開発用言語を用いて筆者が作成・実用化したものの中から、紙ベースクリニカルパス管理システム、病院業務支援システム、職員健診システムの3つを紹介し、医療者が医療を行いながらでも、この程度までは作成できるということを示した。また、医療者が作成するソフトウェアはベンダーが開発するものとは異なる点が多いにもかかわらず、その意義はこれまでのところほとんど理解されていない。導入にかかる費用が安価であることは言うまでもない。重要なことは、それ自体が現場における有用なツールとなっているということ、コンテンツの変更に柔軟な対応ができるということ、作成したソフトウェアに含まれる業務フロー・医療知識が医療現場に含まれる情報を適切に抽出したものであるということである。将来的には医療用システム開発に当たって、医療者側からエンジニア側に意思を伝える「言葉」になる可能性がある。今後は医療者が作成するという意義を汲んだ発表の場が必要であり、また、もう少し医療用に特化した作成ツールが必要であろう。

  • ―市販データベースソフト ファイルメーカーProの多様性―
    吉田 茂
    原稿種別: その他
    2006 年 8 巻 2 号 p. 177-182
    発行日: 2006/05/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     日常の診療現場で行われている各種文書作成、統計分析、データ管理などの業務はパーソナルコンピューター(PC)上で市販ソフトを用いて低予算で容易に省力化が可能である。特にファイルメーカーProは扱いやすいデータベースソフトであり、医師を筆頭に多くの医療者が様々な医療の現場で活用しており非常に重宝されている。

     こうした医療現場での利用実態を反映して、各種の学会、研究会でもファイルメーカーProを用いた医療者自作システムの発表をよく目にする。第5回日本クリニカルパス学会学術集会においてもPCによるパス展示の企画に多数の施設から自慢の自作システムが集まり、さながら「ファイルメーカー達人展」の様相を呈した。さらに第6回の同学術集会において、「医療者が作成する医療用ソフトの現状と将来性」と銘打ったシンポジウムが行われ、筆者はその中で「多様性」をテーマにファイルメーカーProを中心とする市販ソフトで作成された医療者自作システムの紹介を行った。その内訳は、スタンドアローン型の便利グッズ的なものから、サーバクライアント型でオーダリングシステムに近い、プロのベンダーのシステムにも引けを取らないものまで種々多様であった。

     今回、ファイルメーカーProを中心とする医療者自作の診療支援システムの利点を紹介し、大手ベンダーによる既成システム中心の医療界の電子化に一石を投じたいと考える。

  • 若宮 俊司, 今田 光一, 松波 和寿, 吉田 茂, 中村 徹, 佛坂 俊輔, 蒲生 真紀夫, 白鳥 義宗, 岡田 晋吾, 小牟田 清, 伊 ...
    原稿種別: その他
    2006 年 8 巻 2 号 p. 183-189
    発行日: 2006/05/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     近年の医療現場の電子化はベンダーに依存するシステム・ソフトウェアだけではなく、医療者自身の作成によるものが数多く利用されている。ところが、今日に至るまで、両者は同様の指標を持って評価されてきており、医療者が作成したソフトウェアの意義と価値が正しく認識されているとは言いがたい。そこで、第6回日本クリニカルパス学会において、医療者が作成するソフトウェアの現状と将来性についてのシンポジウムを行った。これまでに作成された代表的なソフトウェアの紹介とともに、パス機能、病院情報システムとの連携、セキュリティー、アセスメント、可能性と将来性、多様性の6つの観点から様々な議論を行った。議論の中で、医療者が作成するソフトウェアは、それ自体が有用なツールとなりうること、病院情報システムとの連携を図って構築しうるもの、更にベンダーへの提案あるいは共同開発にまで至る可能性があることが示唆された。また、会場において、医療者が作成するソフトウェアの利用に関するアンケート調査を行ったが、オーダリングシステムあるいは電子カルテ導入後においても市販ソフトを利用する施設が多数であり、その中でもファイルメーカーの利用は突出していた。医療者が作成するシステム・ソフトウェアの分野はやっと全国的なレベルでの活動が始まったところであるが、今後、ますますその領域が拡大し、また、より重要な分野となってゆくものと予想される。

feedback
Top