2006 年 8 巻 3 号 p. 221-223
現在病院パスの多くは主に術前と術後のケアが中心であり、術中パスは安全面のチェックが中心となっており、手術室の有効利用や手術・麻酔時間の標準化に使われていない。しかし、手術室の有効利用、手術・麻酔時間の標準化の面から考えたパスの必要性があるのではないかと考え、ある病院での大動脈弁置換術のデータを検討し、その可能性について検討した。対象は、同じ術者により実施された大動脈弁置換術21症例で、手術室入室から出室までの時間経過を麻酔記録より抽出し、さらに手術室入室時を0としてそこからの経過時間の平均と標準偏差を算出した。結果として、入室から執刀、執刀から体外循環(ECC)開始、ECC開始から終了、ECC終了から手術終了、手術終了から出室までの経過時間は、それぞれ56分±11分、37±9分、2時間7分±36分、1時間5分±9分、15分±4分であった。このように体外循環を使用する大動脈弁置換術においても術者が同じであればその手術経過の各経過時間には大きな差は生じない。このようにして各施設で各手術の標準時間を設定することで、手術台の稼働率を上げるように手術を組むことが可能となる。その結果、手術件数の増加、手術の組み方で時間外の延長症例を減らす、パスからはずれた症例を検討することによってその問題点を洗い出す、などの有用性が生じ、医療の効率化、標準化に有用であると思われる。