抄録
流域スケールの流程区分は、河川環境マネジメントにおいて重要で、近年、保全計画で利用されることが増えている。流域スケールの流程区分は、河川に間隔をあけて配置された調査地点の生物データでつくられることが多い。河川で連続して生物データを取得するには多大な労力が必要であり、連続して取得した生物データで流域全体の流程区分を検証した研究はみられない。そこで、本研究では、植生図作成と比べ、より少ない労力で河川植生の連続したデータを取得する方法、および、そのデータを用いた流程区分方法を提案し、得られたクラスターの妥当性を検証した。河川区域を500 mの等間隔で区切った区域(ユニット)を地図上でつくり、現地調査でユニットに出現する植生単位を記録した。ユニットごとに植生単位の在不在を記録したデータを非計量多次元尺度構成法を用いて2次元に集約し、この2次元座標を用いてK-means法による非階層クラスター分析でユニットを分割した。指標指数(IndVal)を用い最適な分割と各クラスターの指標群落を選定した。クラスターの空間分布と指標群落、平均川幅から各クラスターの特徴を考察した結果、本研究の手法で得られたクラスターは、河川植生の立地特性や流程分布を反映した分割となっており、妥当な流程区分であった。植生図をつくるより少ない労力で流域スケールの流程区分が得られることから、河川環境マネジメントに有用な方法であり、今後、他の河川で検証する価値のある方法だと言える。