日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
8 巻, 3 号
日本クリニカルパス学会誌 第8巻 第3号 (Sep.28.2006)
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
原著
  • 小田切 範晃, 三澤 賢治, 森 周介, 岸本 浩史, 河西 秀, 小松 誠, 田内 克典
    原稿種別: 原著
    2006 年 8 巻 3 号 p. 199-204
    発行日: 2006/09/28
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     【目的】DPC導入に向けた虫垂炎の重症度別パスを作成するにあたり、①重症度の決定に用いる客観的指標の選定、②各重症度での在院日数の設定について検討した。【対象】平成14年4月1日から平成17年3月31日までに手術が施行され急性虫垂炎と診断された285例。【方法】①患者の年齢、初診時白血球数、初診時CRP値、術中所見による虫垂炎の進行度・腹膜炎の程度、ドレーン留置の有無について集計し、多変量解析を用いて在院日数に統計学的に有意に相関する項目を選択した。②選択された項目を基に患者のグループ分けを行い、DPCの設定日数を参考にして重症度別の在院日数を決定した。【結果】①在院日数に統計学的に有意な相関を示したのは、年齢、初診時CRP値、ドレーン留置の有無であった。②上記項目を基に重症度1:ドレーンなし、初診時CRP 10mg/dl未満、重症度2:ドレーンなし、初診時CRP 10mg/dl以上、重症度3:ドレーンあり、の3グループに分類した。各グループの在院日数をDPCの設定を参考にし、重症度1:4日、重症度2:9日、重症度3:19日と設定した。過去の症例における適合率は75.9%、92.3%、82%であった。【結論】患者年齢、初診時CRP値、ドレーン留置の有無を基にグループ分けを行うことによって、虫垂炎の重症度別パスの作成が可能と思われた。

  • ―乳房切除術クリニカルパスに携わる看護師への調査から―
    阿部 祝子, 西村 治彦, 東 ますみ, 佐藤 勉, 相馬 民太郎, 稲田 紘
    原稿種別: 原著
    2006 年 8 巻 3 号 p. 205-213
    発行日: 2006/09/28
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     クリニカルパスの実践運用にあたっては、医療チームの連携が必須である。なかでも、患者を中心としたチーム医療におけるコーディネート役を担う看護師の役割は重要である。そのため、看護師のクリニカルパスに関する知識や参画意識がクリニカルパスの運用やバリアンス判断に大きく影響を及ぼすと推察される。そこで、乳房切除術クリニカルパスに携わる看護師のクリニカルパスに関する知識及び意識を把握するために、無記名式アンケート調査を実施した。

     その結果、クリニカルパス及びバリアンスに関する知識の不足によって、クリニカルパスの運用が曖昧となり、日常の看護業務でのバリアンス判断を困難にしている現状がみられた。また、業務の軽減という効用への期待が先行し、クリニカルパス本来の目的達成にむけた運用プロセスの基本が欠落する危険を孕んだ状況も浮かび上がった。これらは、日常の看護業務の中でクリニカルパスを着実に実践し、クリニカルパスの充実を図っていく上での留意点を示している。

学会報告(第6回学術集会) パネルディスカッション 大学病院におけるパス導入の現状と問題点
  • 藤田 博正, 遠坂 タエ子, 久留米大学病院 クリニカルパス委員会
    原稿種別: その他
    2006 年 8 巻 3 号 p. 217-219
    発行日: 2006/09/28
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     久留米大学病院ではクリニカルパス委員会が発足して以来5年間に、パス使用率は50%に達した。当院のクリニカルパス委員会の組織を自動車に例えると病院パス委員会が車体とハンドル、看護部パス企画委員会がエンジン、病棟パス委員会が車輪である。現在の活動は、①パス大会(シンポジウム形式)、②化学・放射線パス研修会の開催、および化学・放射線治療レジメンのパス化(ケモパス委員会)、③病棟別・科別パス使用率の調査と報告、④パスラウンド、⑤学会や他病院パス大会への出席に対する経済的支援、⑥パス作成時における専任看護副部長・看護支援業者の指導と援助などである。今後の課題として、①パスのIT化、②パスの質的向上(標準化)、③学生、レジデント教育、④ホームページでのパスの公開、⑤TQMのための総合的システムの構築が挙げられる。

  • 古家 仁
    原稿種別: その他
    2006 年 8 巻 3 号 p. 221-223
    発行日: 2006/09/28
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     現在病院パスの多くは主に術前と術後のケアが中心であり、術中パスは安全面のチェックが中心となっており、手術室の有効利用や手術・麻酔時間の標準化に使われていない。しかし、手術室の有効利用、手術・麻酔時間の標準化の面から考えたパスの必要性があるのではないかと考え、ある病院での大動脈弁置換術のデータを検討し、その可能性について検討した。対象は、同じ術者により実施された大動脈弁置換術21症例で、手術室入室から出室までの時間経過を麻酔記録より抽出し、さらに手術室入室時を0としてそこからの経過時間の平均と標準偏差を算出した。結果として、入室から執刀、執刀から体外循環(ECC)開始、ECC開始から終了、ECC終了から手術終了、手術終了から出室までの経過時間は、それぞれ56分±11分、37±9分、2時間7分±36分、1時間5分±9分、15分±4分であった。このように体外循環を使用する大動脈弁置換術においても術者が同じであればその手術経過の各経過時間には大きな差は生じない。このようにして各施設で各手術の標準時間を設定することで、手術台の稼働率を上げるように手術を組むことが可能となる。その結果、手術件数の増加、手術の組み方で時間外の延長症例を減らす、パスからはずれた症例を検討することによってその問題点を洗い出す、などの有用性が生じ、医療の効率化、標準化に有用であると思われる。

  • 大水 美名子
    原稿種別: その他
    2006 年 8 巻 3 号 p. 225-226
    発行日: 2006/09/28
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー
学会報告(第6回学術集会) シンポジウム1 電子カルテシステムとパス導入の検証 ~先発病院の反省とアドバイス~
  • 竹田 慎一
    原稿種別: その他
    2006 年 8 巻 3 号 p. 227-229
    発行日: 2006/09/28
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     当院では、2003年の日本医療機能評価機構の受審に際し、電子カルテ(EMR)により診療録の整備を図ることとし、2001年12月EMR推進運営委員会を立ち上げた。業者選定に際しては、ソフトウエアの高い自由度の実現と開発コストの低廉化のため、パッケージではなく、当院にオーダエントリシステムを導入していた(株)ハルク社との共同作業による病院独自のEMR構築を行うこととした。部門毎に開発チームが週1回会議を持ち、同じく週1回開かれるEMR-PM(project manager)委員会において部門間の調整、仕様の最終決定を行う方式でシステム構築を行った。当院のEMRの特徴は、1.410台の端末と中精細モニタの標準仕様による高機能マンマシンインターフェイス、2.テンプレート、セット機能、タスクリスト承認機能、褥創・NSTなどのチーム管理ツールをはじめとした高い自由度と利便性、3.ログインに際しては指紋認証を行う高度なセキュリティなどが上げられる。クリニカルパスについては、2003年9月白内障、鏡視下半月板切除、前十字靭帯再建パスの電子化から始まり、2005年9月現在では90パターンのパスが電子上で稼働している。CPビルダーによるパスのパソコンでの作成・修正、ステップアップ機能、アウトカム・バリアンスの電子登録などEMRと同様に高い自由度と利便性が得られている。

学会報告(第6回学術集会) ワークショップ2 人事考課とモティベーションマネジメント
  • 千葉 はるみ
    原稿種別: その他
    2006 年 8 巻 3 号 p. 231-233
    発行日: 2006/09/28
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     平成14年の健康保険法の改正に際し、健康保険料で整備されていた社会保険病院のあり方が見直された。改革案のひとつとして、独立採算による経営を行うため、給与体系の見直し等による事業運営の適正化を図ることが盛り込まれた。

     新給与制度体系では、①病院自らの責任で業績等に応じた自主的な経営ができること ②優秀な人材が確保しやすい仕組みであること ③職員が働き甲斐を感じられる仕組みを目的に、それまで全国一律であった給与体系を各病院の実力に応じた給与体系に改めることとした。役割等級制度を取り入れ、職員各々の役割の大きさ・重さ・業績および役割の遂行状態等に反映する制度とし、その役割遂行状況を給与や役割等級へ反映させるため、評価制度を導入し、平成17年度から新給与制度が実施された。

     この制度の評価は現段階では十分にできかねる状態であるが、新給与制度の導入・定着のためには、必要性の理解や制度の受け入れやすさと共に導入前の準備が大切である。

学会報告(第6回学術集会) ワークショップ3 パスと薬剤師―薬剤師の臨床アウトカム―
  • 小林 敦, 狩野 江利加, 丸岡 博信, 矢島 秀明, 前島 和俊, 池谷 俊郎
    原稿種別: その他
    2006 年 8 巻 3 号 p. 235-240
    発行日: 2006/09/28
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     前橋赤十字病院では2000年1月にクリニカルパス(以下パス)委員会が発足し、現在までに約130種類のパスを作成、運用している。パスはチーム医療に必要不可欠なツールであり、医療の質の向上に役立っている。薬剤部では、医薬品の適正使用を推進するため積極的に院内でのパス活動に参加し、以下の取り組みを行った。1)術後感染予防のための抗菌薬の選択について検討した。米国疾病管理予防センター(以下 CDC; Centers for Disease Control and Prevention)のガイドライン等からパスを検証し、抗菌薬の種類、投与のタイミング、投与期間を改善し、適正使用が推進された。2)術後疼痛に適応のある鎮痛薬の薬物動態や副作用について調査・検討し、パスで術後疼痛管理に推奨される鎮痛薬を明示した。婦人科腹腔鏡下手術パスでロキソプロフェンの有効性をペインスケールで評価し、術後経口鎮痛薬を標準化した。3)静脈栄養法では、院内での中心静脈栄養の施行調査を行い、静脈・経腸栄養のガイドラインと使用状況で異なる点を指摘した。患者の病態による適切な栄養補給の重要性が認識され、栄養支援チーム(以下NST;Nutrision Support Team)の発足につながり全病院的な業務へと発展した。4)地域医療連携への関与として、喘息治療での吸入薬の使用法を病院が開催する登録医大会で開業医に紹介、現在連携パスの作成や病院薬剤部門と市中調剤薬局の連携(以下薬薬連携)へ展開している。

     医薬品の適正使用を主眼に置いた薬剤師によるパス活動から、感染管理チーム(以下ICT;Infection Control Team)やNST、指診連携といった組織横断的な業務へ進展した。

  • 角谷 文恵, 勝尾 信一
    原稿種別: その他
    2006 年 8 巻 3 号 p. 241-243
    発行日: 2006/09/28
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     当院の薬剤師は、パス委員会設立当初より委員として2名参加している。その中で、薬剤師は作成小委員会とEBM小委員会、更に1名はパス委員会のコアメンバーである準備委員会にも所属している。ここでは、パス委員である薬剤師がどのようにパス作成や維持に関わっているかを紹介する。

     作成小委員会では、作成時や改定時に採用薬剤の検討や、表記方法の統一を図るなどしている。

     EBM小委員会では、パス作成時に過去の診療データ上では標準化できないものについてガイドラインなどを調査し、EBMに基づいた適切な薬剤が採用されるよう関わっている。

     準備委員会では、クリティカルパス・カンファレンスやクリティカルパス入門講座などの開催やパスカルテの監査などで、医師・看護師に偏りがちだった考え方を修正することもたびたびである。

     パス委員会に薬剤師が参画することで、医師の好みや経験などで薬剤が選択されることは無くなりつつある。また、作成されたパスを薬剤師がチェックすることで医療事故も防げている。

パス大会見学会報告
  • (第2回福井総合病院パス大会見学会)
    勝尾 信一
    原稿種別: その他
    2006 年 8 巻 3 号 p. 247
    発行日: 2006/09/28
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー
  • 水野 勝則
    原稿種別: その他
    2006 年 8 巻 3 号 p. 248-250
    発行日: 2006/09/28
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     当院の人工股関節全置換術のバリアンス分析と13施設間の比較によるベンチマーキングを行った。バリアンス分析による改善案として、①長谷川式スケールの削除、②ドレーンに関する項目の削除、③術後のジクロフェナクナトリウム坐薬の用量は現行のまま、となった。ベンチマーキングでは①術前除毛の削除、②術前浣腸の削除、③抗生剤投与期間は適当、④車椅子乗車時期および荷重時期の早期化、⑤退院時期の早期化が提案された。

  • 勝尾 信一
    原稿種別: その他
    2006 年 8 巻 3 号 p. 251-252
    発行日: 2006/09/28
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     当院の手術前後創管理の標準化を図ることを目的に、ベンチマーキングを行った。対象は当院の外科系6科と、院外9施設からの19科である。事前アンケートで現状調査し比較検討した。手術前の剃毛・除毛を全くしないのが10科(40%)あった。手術創の日々の消毒をしないのは6科(24%)だった。手術創を覆うものは、浸出液がなくなった時期で被覆材が11科(44%)なしが4科(16%)だった。シャワーを抜糸前に許可しているのは13科(52%)だった。手術前後の創管理に関して、理論としては聞いていても実行できていない科にとって、現状を目の当たりにすることで、認識を新たにできたと思われる。当院としては、この機会に大きく伸展したいと考えている。

  • 小林 幸代
    原稿種別: その他
    2006 年 8 巻 3 号 p. 253-255
    発行日: 2006/09/28
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     診療録の監査は、量的点検と質的点検に分けられる。当院では、作成されたパスは使用を開始する前にパス作成小委員会による監査を受ける。この監査は形式的な基準と内容の基準を充たしているかを監査しており、質的点検と考えられる。そして、パス使用後に行われる診療情報管理課の監査は、空欄や記載漏れを点検する量的点検と考えられる。またパス委員会によるパス監査では、使用方法を含めて点検しており、量的点検と考えられる。一方、パス使用後に記載内容を元にして行う、アウトカム評価やヴァリアンス分析は、質的監査と考えられる。これらの監査を通して、質の高いパス診療録が作成され、ひいては病院全体の質の向上につながると考える。

  • 永岩 里美
    原稿種別: その他
    2006 年 8 巻 3 号 p. 256-257
    発行日: 2006/09/28
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     業務の簡素化及び記録の削減を目的に、診療情報の一元化記録を導入した。その導入前後の記録の変化を検討した。整形外科及び内科の医師及び看護師記録の字数を調査したところ、いずれも一元化記録導入で増加していた。また、以前は職種によって記録用紙も保管場所も異なっていたが、すべて診療録に統一された。記録字数の増加は、他の職種の人に見られるという緊張感から、誰が読んでも内容を理解できる記録を心がけるようになったためと考える。業務の簡素化及び記録の削減に関しては、評価方法も含めて今後の検討が必要である

feedback
Top