2007 年 9 巻 1 号 p. 13-22
クリニカルパスは、全国に普及が進んでいる。しかし、現状は、第1段階のクリニカルパスが多く、バリアンス分析に困難を感じている施設が多い。第1段階のクリニカルパスを第2段階に進展させるには、第1段階のクリニカルパスに適ったバリアンス分析が必須であり、そのためのデータならびにその活用について明確にしておかなければならない。
本研究では、著者らは、クリニカルパス運用上の問題の核心を明らかにするために、乳房切除術クリニカルパスが適応された100症例について、クリニカルパスを中心として診療記録の記載内容を精査・分析した。その結果、退院時に看護師が判断したバリアンスの程度は、「バリアンスなし」が79件、「変動」が6件、「逸脱」が0件、「脱落」が4件、「バリアンス程度の記載なし」が11件であったのに対して、診療記録の精査により判断したバリアンスの程度は、「バリアンスなし」が7件、「変動」が84件、「逸脱」が5件、「脱落」が4件であった。
このように大きな差が生じた背景には、合併症の有無に偏りがちなバリアンスの判断、クリニカルパスの診療記録上での位置づけの不明確さ、バリアンス判断基準となるアウトカム設定の具体性の不足があることが確認された。これらの事実は、第1段階のクリニカルパスにおけるバリアンスの収集、分析及び医療ケアの見直しという一連のプロセスを持続的に実践できるしくみや教育について示唆を与えてくれる。