日本クリニカルパス学会誌
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Print ISSN : 2187-6592
実践報告
針刺し切創事故に対するクリニカルパス活用の試み
堀川 俊二梅岡 里美長岡 史恵植村 瑞枝
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2007 年 9 巻 1 号 p. 37-48

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抄録

 近年、医療現場において針刺し切創事故が問題視されるようになり、職業感染予防に対する認識は高まりつつある1-3)。針刺しサーベイランスも積極的に取り組まれているが4)、日本においては報告率を高めることが重要な課題とされている5)。当院のアンケート調査では実際に報告された針刺し切創事故件数は平成13年23件、平成14年33件、平成15年22件、平成16年19件であったが、受傷後に報告していない件数は平成13年27件、平成14年36件、平成15年45件、平成16年45件であり、多くの職員が報告をしていないことが判明した。報告しない理由としては「汚染源血液の感染症が陰性だった」「忙しくて忘れた」「報告が煩雑で面倒である」などであり、労働安全衛生への関心の低さ、サーベイランスに対する認識の低さが明らかとなった。また事故後の対応は院内感染対策マニュアルに記載されているが、事故発生現場で事故者は精神的ダメージを受けているにもかかわらず、迅速な対応を求められるため、マニュアルを読みながら対処していくことは困難であり、簡易で利便性の高いシステムが必要となる。

 そこで今回、針刺し切創事故クリニカルパスとして、受傷時の初期行動からカルテ作成の手続き、感染症別に分類した対応とその後の定期的な受診までをオーバービュー形式で作成した。さらに作成した針刺し切創事故パスは血液検査に関する同意書、針刺し事故報告書、時間外緊急検査依頼書、処方箋などとともにファイルに綴じ「針刺し切創事故パスセット」とし、各病棟・各科・救急室・検査室に設置し運用している。報告率の向上や事故後の適切な対応に有効利用されることが期待できる。

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© 2007 一般社団法人日本クリニカルパス学会
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