犯罪社会学研究
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Resilience Processとしての非行からの離脱 (課題研究 犯罪者の立ち直りと犯罪者処遇のパラダイムシフト)
河野 荘子
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2009 年 34 巻 p. 32-46

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抄録

従来の離脱モデルは,物理的な時間の流れの中で,どのような要因が離脱に影響を与えるのかを示したものである.そこに,環境との相互作用によって,アイデンティティの変革が起きる心理的プロセスを組み入れることで,より力動的な離脱モデルができあがる.本論文は,レジリエンスプロセスの概念を紹介し,その最小単位である心理面接過程の分析をもとに,少年が非行行動をしなくなるまでのプロセスモデルを提示する.モデルは,(1)「対象に対する認識の変化」→「抑うつに耐える力の向上」→「対象に対する意味づけの変化」という循環的関係を体験する(2)物事に取り組む力の方向転換によりターニングポイントを迎える(3)「対象に対する認識の変化」と「対象に対する意味づけの変化」が背景化し,「抑うつに耐える力」の向上と「物事に取り組む力」の強化が起こるの3つの流れからなる.適応が進むにつれて,抑うつに耐える力は向上し,認識や意味づけの変化の対象となる物事は,自分の周囲の人物といった具体的対象から,目標という抽象的な対象にまで広がっていく.非行からの離脱には,抑うつに耐える力と物事に取り組む力をいかにはぐくむかが,大きな課題となると考える.

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© 2009 日本犯罪社会学会
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