犯罪社会学研究
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社会的企業 (課題研究 犯罪者の立ち直りと犯罪者処遇のパラダイムシフト)
社会的排除層の社会参加を確保するツールとして
大高 研道
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2009 年 34 巻 p. 82-94

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抄録

社会的排除層の支援をめぐる政策的アプローチは,1990年代後半以降,ドラスティックな変化をみせている.それは,従来の分配的正義にもとづいた弱者への給付を基本とする「社会福祉welfare」から,社会保障の見返りに一定の就労義務を賦課する「勤労福祉workfare」への転換を軸とした福祉国家再編過程において顕著にみることができるが,その中核的な戦略のひとつが,福祉給付受給者の勤労を促す積極的労働市場政策と連動した多彩な自立支援プログラムの展開である.これらの,労働市場への(再)統合を支援する取り組みは,社会的排除層の「自立」にむけて一定程度の効果をあげているが,同時に,単に仕事に就けば職業的自立が達成されるわけではないことも次第に明らかにされている.とりわけ,長期間にわたって社会的に排除されてきた人々は,多面的な不利益を被っており,なおかつ人間関係が非常に限定的であるため,排除からの回復(=自立)のプロセスには,認知的で実践的な技能に限定されない,社会生活全般にわたる自立や関係性の回復にむけた支援が不可欠となる.本稿では,そうした限界を超えて,協同的な自立支援のアプローチを提起しようと試みる社会的企業の実践に注目し,その意義と課題について,イギリスの事例をもとに検討したい.

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© 2009 日本犯罪社会学会
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