犯罪社会学研究
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更生保護施設生活者のスティグマと「立ち直り」
─スティグマ対処行動に関する語りに着目して─
都島 梨紗
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2017 年 42 巻 p. 155-

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抄録

本稿の目的は,更生保護施設で生活を送る非行経験者の語りをもとに,非行経験者が就労・社会生 活を送る際に知覚するスティグマとその対処行動を整理し,スティグマと「立ち直り」の関連を明ら かにすることである.  「非行・犯罪からの離脱」に関する研究では,「立ち直り」の過程において,スティグマからの回復 が重要であると言われている.しかしながら先行研究では更生保護施設におけるスティグマの効果や 当事者の対処行動について十分に取り上げられては来なかった.  本研究で得られた知見は,主に以下の2つである。1つは,スティグマ対処行動についてである。 就労生活や施設生活を維持するために,「補償努力」や「開き直り」という方法でスティグマの埋め合 わせをしていたことである.もう1つは,「更生保護施設」という集合的なスティグマも存在しており, それを知覚している非行経験者にとって更生保護施設は,スティグマ強化の場だけでなく,緩和の場 として経験されていることである.本研究の知見を踏まえると,スティグマ付与の経験とその対処行 動が非行からの「立ち直り」において重要な解釈資源をもたらしていることがわかった.

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© 2017 日本犯罪社会学会
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