2017 年 42 巻 p. 50-64
米国連邦最高裁判所は脳科学・神経科学の新たな知見を採用して,少年犯罪者の刑の減軽に関する いくつかの注目すべき判断を示してきた.そしてこれを契機に,少年の量刑をめぐる脱厳罰化の動き が米国各州において見られる.もっとも,米国連邦最高裁判所は少年の量刑のみならず,少年司法手 続における適正手続保障に関しても,医学的知見を踏まえた画期的判断を示している.いわゆるミラ ンダ原則に基づいて,捜査官が少年被疑者に弁護人依頼権,自己負罪拒否特権を告知しなければなら ない「身柄拘束状況」が,少年の年齢によって客観的に決定されるとした2011年J.D.B.判決がその代 表的判例である.「少年は大人とは異なる」という基本的観念の下,少年に対する適正手続保障の本質 は,少年期に固有の認知統制システムの脆弱性を補完することであるという認識を本判決は示唆して いる.わが国においても参考にされるべきである