日本臨床試験学会雑誌
Online ISSN : 2759-7601
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小児白血病診断に関連するCDISC統制用語の変更に関する分析
永井 かおり山本 松雄齋藤 明子齋藤 俊樹
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2025 年 29 巻 p. 1-8

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抄録

背景 CDISC Controlled Terminology(統制用語)は,薬事承認データ提出において標準化されたデータを提供するために使用される.統制用語の更新は,電子症例報告書の設計や複数試験間のデータ統合に影響を及ぼす.しかし,これらの更新がデータ運用に与える影響については十分な検討がなされていない.

目的 日本小児がん研究グループ(JCCG)血液腫瘍分科会において急性リンパ芽球性白血病の診断基準で使用される9種類の細胞表面マーカーの統制用語の変更の詳細とその理由を調査し,データ標準化への影響を検討する.

方法 2007年から2024年にリリースされた統制用語の各バージョンをRを用いて分析した.9つの細胞表面マーカーを表す統制用語について,Submission Value(提出用用語),定義,およびコードの更新を調査した.

結果 2008年から2023年にかけて,8種類の細胞表面マーカーを表す統制用語が追加されていた.これらの統制用語の定義およびコードが更新された場合でもSubmission Valueが変更されず,同一の値が引き続き使用されるケース,同一のSubmission Value,定義およびコードを持つ統制用語が複数のコードリスト(統制用語のカテゴリ)にまたがって存在するケースが確認された.また,統制用語が特定のコードリストから削除された場合,新たな運用手順が必要とされていた.

結論 本研究は,統制用語の更新がデータ運用の実務に与える影響を明らかにし,統合解析時の注意点を示した.Submission Valueおよび統制用語の定義を理解することは,薬事承認データ提出および統合解析の一貫性を維持する上で重要である.

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