2025 年 29 巻 p. 9-19
背景 新興・再興感染症発生時における早期の治療法確立は,国際的に喫緊の課題である.
目的 今後の新興・再興感染症発生時に,医師主導治験を円滑に運営するため,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行期に実施された医師主導治験において,治験参加医療機関,および地域研究管理委員会(RMC)と治験調整事務局で生じた課題を調査した.
方法 課題は,聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院でのミーティング議事録と収録音源,治験管理室およびRMC・治験調整事務局への聞き取り調査と会議議事録をもとに抽出した.課題発生時期を「医師主導治験準備期間」,「医師主導治験実施期間」,「医師主導治験終了後」に分類し,「医師主導治験特有の課題」と「COVID-19流行下特有の課題」にカテゴリー化した.
結果 医師主導治験特有の課題として,院内CRCの「治験管理室の事務作業過多」などが挙げられた.COVID-19流行下特有の課題として,「看護師の精神的ストレス」や「急性感染症を対象とした治験運用における協力体制の構築」などが挙げられた.
結論 新興・再興感染症パンデミック期における医師主導治験の円滑な実施には,経験が少ない治験参加医療機関の治験実施能力を事前に把握し,RMC・治験調整事務局が業務量や進捗を適切に管理することが重要である.また,医療従事者の精神的・肉体的ストレスが治験遂行の障害となる可能性があるため,事前の対応策を講じて負担軽減を図る必要がある.