日本障害者歯科学会雑誌
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症例報告
自閉症児に対する視覚支援の1例 ―歯磨き行動の獲得を目指して―
前原 朝子荻田 みさと稲田 久美子丸本 桜子村田 碧有友 たかね川本 博也
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2015 年 36 巻 4 号 p. 637-642

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抄録

歯磨きや歯科治療に対して不適応行動がみられる自閉症児に対し,歯磨き行動獲得を目的として歯科衛生士が介入した結果を報告する.方法は,TEACCH(Treatment and Education of Autistic and related Communication handicapped Children)プログラムを参考にし,絵カードを用いて定期健診を実施した(1回/1カ月).絵カードは定期健診実施手順に合わせて並べ,絵カードを見せる,絵カードの内容を実行させる,実行できればその絵カードをフィニッシュボックスに入れる,カードをすべてボックスに入れると終了する,という方法を繰り返した.結果として,介助磨きに対する不適応行動は徐々に消失したが,歯磨き行動の獲得は困難であった.一方,特別支援学校では,絵カード交換式コミュニケーションシステム(Picture Exchange Communication System;以下PECS)を用いた指導も行われた.その時期から対象児の自発的行動がみられるようになり,当院においても絵カードの使用方法を変更し,PECSの一部(絵カードと言葉の交換)を用いて歯磨き指導を行うようにしたところ,徐々に歯磨き行動に変化が現れ,歯磨き行動が獲得された.以上の結果から,歯科において不適応行動がみられる自閉症児への対応方法として,絵カードを用いた視覚支援は,スケジュールの構造化とPECSを併用し,双方向のコミュニケーションを行うことで,歯磨き行動の獲得を促す可能性があることが示唆された.

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© 2015 一般社団法人 日本障害者歯科学会
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