日本障害者歯科学会雑誌
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原著
自閉スペクトラム症児における洗口の習得段階と発達年齢との関連
荒木 麻美名和 弘幸藤井 美樹堀部 森崇有川 智子溝口 理知子図師 良枝髙橋 脩嶋﨑 義浩福田 理
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2016 年 37 巻 2 号 p. 134-141

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抄録

自閉スペクトラム症児は食行動や口腔衛生管理の問題などから齲蝕に罹患しやすく,フッ化物配合歯磨剤やフッ化物洗口を取り入れた早期からの齲蝕予防が重要であるが,これらのフッ化物応用に不可欠な洗口能力に関する報告は少ない.本研究では,就学前の自閉スペクトラム症児50名を対象に,洗口時の行動観察から洗口動作を5段階に分類し暦年齢および発達年齢との関連性を明らかにするとともに,各種フッ化物応用を想定して洗口の習得を未習得群,やや習得群,習得群の3段階に分類し,習得の目安となる発達領域とその発達年齢について調査・検討した.

1.洗口動作の5段階の人数割合は,まったくできない14%,コップを口元に運ぶまで可18%,水を口に含み吐き出すまで可10%,水を口に含み溜めてから吐き出すまで可34%,水を口に含み頰を動かして吐き出すまで可24%であった.

2.洗口動作の5段階は,暦年齢と有意な相関は認められなかったが,発達年齢(各発達領域および平均)とは有意な相関が認められた(p<0.05).

3.発達年齢における最適なカットオフ値は,未習得群とやや習得群の間では2歳0カ月,やや習得群と習得群の間では2歳6カ月であった.

自閉スペクトラム症児において平均発達年齢が2歳0カ月を目安に水を吐き出す練習を始め,その習得状況に応じて頰を動かす練習を進めていくことでスムーズな洗口の習得が期待できると考える.

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© 2016 一般社団法人 日本障害者歯科学会
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