日本障害者歯科学会雑誌
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原著
亜酸化窒素吸入鎮静法における臨床症状の発現時間 ―歯科治療前の吸入時間は何分必要か?―
三井 達久小笠原 正磯野 員達鈴木 智子伊沢 正行鈴木 貴之蓜島 弘之岡田 芳幸
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2016 年 37 巻 2 号 p. 127-133

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抄録

亜酸化窒素吸入鎮静法は,歯科治療に対して不安や恐怖を有する患者や,治療に不協力な患者のストレスを軽減する有効な精神鎮静の一手段として歯科臨床において広く活用されている.亜酸化窒素吸入鎮静法では,さまざまな臨床症状が発現する.亜酸化窒素吸入による主観的な臨床症状の発現時間について検討した.調査は,チェアー上に仰臥位をとらせ,フェイスマスクにより100%酸素を1分間吸入した後,各濃度の亜酸化窒素を20分間吸入させた.アンケートとして,①「身体が温かい感じ」,②「手足のしびれ感」,③「舌,口唇のしびれ感」,④「聴覚の異常感」,⑤「心地よい感じ」,⑥「落ち込む感じ」,⑦「閉眼」,⑧「気分不快」の8項目について1分ごとに被験者に確認した.亜酸化窒素吸入濃度は,10,20,30,40%とし,日を変えて調査し,臨床症状の発現時間を記録した.主観的臨床症状のなかで最初に発現したのはどの亜酸化窒素吸入濃度でも「身体が温かい感じ」であった.しかしながら10%濃度では,20分間の吸入で「身体が温かい感じ」を発現しなかった者が33.3%存在した.20%濃度における「身体が温かい感じ」の発現時間の70%タイル値は7分,30%濃度で5分,40%濃度で4分であった.以上より吸入濃度が高くなるにつれ,各主観的症状の発現時間が早くなることが示唆された.

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© 2016 一般社団法人 日本障害者歯科学会
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