2017 年 38 巻 1 号 p. 4-15
歯周病原菌のPorphyromonas gingivalis (P. gingivalis)はさまざまな全身疾患の起因菌となるものの,その制御手段は依然口腔清掃管理を主としたものである.有病高齢者や重症心身障害児者では,口腔清掃管理が困難なことも多く,疾患に起因する姿勢異常,免疫機能や神経筋機能の低下などによって,全身疾患発症リスクはより高くなる.特に呼吸器官は口腔に直結しており,痰などから口腔常在菌が検出されている.口腔機能の低下は摂食嚥下機能に影響を与え,誤嚥性肺炎発症を誘発させる.遺伝子型に高い多様性をもつP. gingivalisのなかでも重症歯周病患者から多く検出されるといわれているfimA II型の細胞侵入を受けた気管上皮細胞における応答性と,P. gingivalis増殖抑制機能をもつことが報告されているアミノペプチダーゼ阻害剤であるBestatin添加による影響について,炎症の指標となるIL-6,IL-8,STAT3ならびにSOCS3を用いて培養細胞レベルで検討した.fimA II型は気管上皮細胞内に侵入することが可能であり,8時間までは生存可能であることが確認された.またBestatinは気管上皮細胞内に侵入したfimA II型の生存には影響を及ぼさない可能性が示唆された.しかしながら,菌感染,侵入により上昇したIL-8遺伝子発現への関与が推察され,Bestatinのアミノペプチダーゼ阻害剤としての炎症関連物質の発現促進・抑制への調整機能を活用して,恒常性を逸脱し増悪した炎症症状への抑制効果は期待できると思われ,今後の臨床応用に向けて研究を遂行する意義は高いと考えられた.