2017 年 38 巻 2 号 p. 192-197
Coffin-Lowry症候群は特異顔貌,低身長,骨格奇形,知的障害などを特徴とする奇形症候群である.口腔内所見では,乳歯の早期脱落,永久歯では上顎前歯の歯根短縮や歯周疾患による早期の歯の脱落などがあると報告されているが,歯周治療に関する報告は見当たらない.
今回,Coffin-Lowry症候群と診断された,障害者支援施設入所の28歳男性と46歳男性の2症例に対して歯周治療を行ったので報告する.主訴は健診,既往歴は,脊柱後側彎症,視覚障害など.初診時の口腔内所見は,清掃状態は不良でプラークや歯石が多量に沈着し,歯肉の発赤・腫脹,深い歯周ポケットや歯の動揺,歯槽骨の吸収が認められた.また,上顎中切歯や小臼歯が短根であり,中等度慢性歯周炎に罹患していた.治療経過は,重度の知的障害があるため,口腔清掃は,介助ケアとプロフェッショナルケアで対応した.また,Tell,Show,Do(TSD)やカウント法などの行動療法を応用しながら,非外科的に歯周治療を行った.再評価後,残存した深いポケットに対し,必要に応じて抗菌療法とスケーリング・ルートプレーニング(SRP)の併用療法を静脈内鎮静法下にて実施した.その結果,歯周組織の状態が改善されたため,Supportive periodontal therapy(SPT)へ移行した.
今回の2症例の臨床所見から,Coffin-Lowry症候群は,歯周炎を伴う遺伝性疾患と考えられるので,早期からの歯周治療や治療後の口腔管理が重要であると思われた.