2019 年 40 巻 1 号 p. 39-43
Rett症候群患者は,意識下歯科治療困難,呼吸異常,気道確保困難といった問題点を有する.今回,Rett症候群患者への在宅訪問歯科診療(以下訪問診療)の依頼を受けたが,在宅では拒否行動が著しく,訪問診療での対応が難しいと判断した.そこで当施設へ移送して全身麻酔下歯科治療を含めた総合的な口腔健康管理を行ったので報告する.
患者は40歳,女性.障害名として知的能力障害,脳性麻痺,てんかんがあり,18歳時にRett症候群と診断された.座位保持困難,日常生活動作は全介助,知的能力障害は重度(大島の分類1),軽度側彎症であった.初診4カ月前,他院で全身麻酔下歯科治療を実施したが治療に対する家族の不信感より以後の受診が中断していた.食事量減少,未処置う蝕が気になり家族より当施設へ訪問診療の依頼があった.しかし,在宅では拒否行動が著しいため,当施設にて静脈麻酔下で口腔内診察を行った後に,全身麻酔下に補綴処置も含めた歯科治療を行い,機能回復を図った.その後,歯科衛生士による訪問歯科衛生指導と定期的な静脈麻酔下での口腔衛生管理で現在まで対応している.
在宅では対応困難な患者に対して,麻酔管理を用いた安全な歯科治療,機能回復と衛生管理に配慮した補綴物製作,十分な質と頻度の訪問歯科衛生指導を地域で確保する必要があると考えられた.