2019 年 40 巻 1 号 p. 72-79
近年,障害のある人に対する専門的な歯科治療へのニーズが高まり,それに対応できる歯科医師養成の必要性が増している.そのため大阪大学歯学部では,障害者歯科学に対する足掛かりを得ることを目的として,2年次学生に対し障害者支援施設体験実習を行っている.本研究では,この実習の教育効果の検証を目的とし,実習後の感想レポートを質的に分析し,実習を通じた学生自身の学び,ならびに障害者観の変化について評価した.
学生の学びと障害者観についてまとめたところ,①実習に対する感情の変化,②障害者観の形成,③障害のある人の口腔状況についての気付き,④障害者歯科への気付きの4項目に分けられた.そして学生の実習前後の否定的な感情から肯定的な感情への変化,および障害のある人への接し方や障害そのものについての記述がみられた.実習前には障害への知識不足による先入観を認めたが,実習を通し工夫すれば障害のある人ともコミュニケーションがとれることを知り,障害について具体的な理解を深めたと推察できる.さらに障害のある人の口腔ケアの困難さから,特性に合わせた対応の必要性といった問題点をみずから見いだすことができた学生もいた.
歯学部学生が障害者支援施設で行う体験実習は,障害のある人の生活環境を通して障害について理解し,障害のある人の歯科的問題点をみずから見いだすことで,障害者歯科学に関する学習意欲の向上に有効であると示唆された.