2020 年 41 巻 2 号 p. 106-111
知的障害者施設利用者のう蝕罹患状況および現在歯数とかかりつけ歯科の有無との関連を知ることを目的とした.
知的能力障害者が利用する3つの施設において歯科検診を実施して未処置歯数,処置歯数,現在歯数を調査し,また,かかりつけ歯科の有無を施設職員から聴取した.調査対象者は知的能力障害110人,Down症候群16人,発達障害28人であった.
1人平均未処置歯数は50~54歳および60~64歳,1人平均処置歯数は45~54歳を除き,各年齢層で施設利用者のほうが歯科疾患実態調査結果よりも小さい値を示した.かかりつけ歯科をもつ者ともたない者の1人平均未処置歯数および1人平均処置歯数は,それぞれ0.4±1.2歯と1.0±1.8歯,8.2±6.4歯と6.0±4.9歯であった.1人平均現在歯数は,35~39歳以降のすべての年齢層で施設利用者のほうが歯科疾患実態調査結果よりも小さい値を示し,60歳以降でその差が顕著となった.また,1人平均現在歯数はかかりつけ歯科をもつ者が21.3±9.6歯であるのに対し,もたない者が27.5±3.2歯であった.
知的能力障害者施設利用者はう蝕罹患状況が定型発達者と同程度であるが,現在歯数については60歳以上で著しく減少することから,歯の喪失を抑制するためにかかりつけ歯科における長期メインテナンスが一つの課題ではないかと考えられた.