日本障害者歯科学会雑誌
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症例報告
経管栄養の重症心身障害児にみられた特発性歯肉肥大の一例
脇本 仁奈小笠原 正植松 紳一郎勝又 たまき鈴木 尚子河瀬 聡一朗吉成 伸夫岡田 芳幸
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2020 年 41 巻 4 号 p. 340-346

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抄録

歯肉肥大を誘発する薬物の服用はなく遺伝的素因もないが,特発性に著しい歯肉肥大を認めた重症心身障害児の一例を経験したので報告する.

患児は7歳8カ月女児.脳性麻痺(痙直型),知的能力障害,四肢麻痺,てんかん,血管型Ehlers-Danlos症候群であった.出生時より経鼻経管栄養,4歳時に胃瘻造設,6歳時に訪問歯科検診にて歯肉肥大を指摘され当大学病院特殊診療科を受診した.

フェニトイン,ニフェジピンやアムロジピンのカルシウム拮抗薬,シクロスポリンなど歯肉肥大を誘発する薬物の服用や遺伝性歯肉線維腫症などの遺伝的素因はなかった.

口腔内は,臼歯部の内側への歯肉肥大が顕著で水平性の堤状形態を有しており,上下顎とも左右の肥大した歯肉内縁が近接していた.肥大した歯肉に炎症所見はみられず,歯肉肥大部に骨はなかった.歯肉肥大により乳歯と後継永久歯の埋伏,舌房の狭窄がみられ,舌背が右側に約80°回転して位置していた.

臼歯部後方の垂直方向への歯肉肥大により上下顎堤が接触し,3横指径の開咬を認めた.歯肉切除により永久歯の萌出,開咬幅の減少が観察できた.しかし徐々に再発傾向を認め,歯肉切除4年6カ月後には顕著な歯肉肥大が,5年後には下顎左右臼歯部の歯肉が接触するほどの歯肉肥大が認められた.歯肉肥大部の再切除を検討したが,気道確保困難,血管型Ehlers-Danlos症候群による易出血性・止血困難のため,高度医学管理が可能な他院への紹介となった.

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