2021 年 42 巻 3 号 p. 250-257
知的能力障害者では,一般に生活習慣としての日常的な歯磨きは確立されていることが少ないため,知的能力障害者通所授産施設の利用者を対象に歯科衛生士が行ってきた「歯磨き活動への自主的参加行動」と「歯科衛生士による仕上げ磨きへの協力度」の変化について検討した.知的能力障害者302人を障害支援区分により軽度(区分1,2),中等度(区分3,4)と重度(区分5,6)の3群に分け,歯磨き活動への自主的参加行動を10段階,歯科衛生士よる仕上げ磨きへの協力度を5段階で評価し,7年間の経年的変化を分析した.
歯磨き活動への自主的参加行動は,障害重症度別の3群間で違いがあり,また,変化はみられたが,いずれの群でもその7年間に有意の向上とはならなかった.一方,歯科衛生士による仕上げ磨きへの協力度は,初めから3群間には違いが認められ,またいずれの群においても,明らかに改善傾向がみられ,歯磨き支援・管理活動の開始から3年経過した時点では有意に向上していた.
以上のことから,長期にわたって歯科衛生士が行った歯磨き支援・管理活動は,知的能力障害者の集団歯磨き活動への自主的参加行動に有意な変化をもたらせなかったものの,歯科衛生士による介助磨きへの協力度を向上させることが示された.