日本障害者歯科学会雑誌
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症例報告
知的能力障害を有する第一第二鰓弓症候群患者に切歯管囊胞を認めた一例
古谷 千昌宮崎 裕則林内 優樹宮原 康太吉田 結梨子林 文子尾田 友紀岡田 芳幸
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2021 年 42 巻 3 号 p. 258-263

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抄録

第一第二鰓弓症候群とは第一第二鰓弓の発生異常により起こる先天異常症候群である.第一,第二鰓弓部位から発生する器官・組織の奇形が片側性に起こることが多く,特に第一鰓弓に由来する上下顎骨の奇形は口腔機能を障害する.今回,知的能力障害を有する本症候群患者において,切歯管囊胞と上顎骨奇形との鑑別が必要であった一例を経験したので報告する.

患者は29歳男性.障害は第一第二鰓弓症候群,中等度知的能力障害を有しており,その他全身疾患などは認めなかった.患者がう蝕処置で受診した際,上顎前歯部の叢生,上顎左側前歯根尖部の膨隆を認めたが,第一第二鰓弓症候群に起因する上顎の奇形と推察した.しかしながら,定期検診時に上顎側切歯根尖相当隆起部の腫脹,排膿を認めたため,パノラマエックス線写真撮影,CT撮影,生検を行った.その結果,切歯管囊胞と診断され,全身麻酔下にて囊胞および埋伏過剰歯摘出術,歯根端切除術を施行した.現在は経過良好である.

本症例は急性変化を起こした早期に摘出を行いえたため,歯列不正の悪化・歯の喪失を防ぐことができたと考えられる.口腔内に奇形を併発する症候群患者では,口腔内病変を症候群の特徴的な症候として捉えてしまう可能性がある.病変が進行性のものであった場合,発見・診断が遅れると機能障害などを合併する危険性があるため,奇形病変であるか進行性病変であるかは継続的な管理によって常に注視していくことが重要と思われた.

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