日本障害者歯科学会雑誌
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臨床集計
自閉スペクトラム症の歯科受診における担当医変更および診療室変更による影響調査
―保護者へのアンケート分析―
加藤 篤廣瀨 満理奈鴨狩 たまき永坂 梨奈田中 恵
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2023 年 44 巻 3 号 p. 289-296

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抄録

自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorders:ASD)のDSM-5における診断基準のなかに「同一性へのこだわり,日常動作への融通のきかない執着,言語・非言語上の儀式的な行動様式」と記載がある.ASDにおける代表的なその特徴を踏まえて,当科では担当歯科医を固定し,また歯科チェアーを同一にするよう配慮を行っている.今回30年以上障害児者の治療を担当していた歯科医師退職の時期(2013年)と,病院建て替えの機会に歯科外来が一新された時期(2019年)に,それぞれASD患者の保護者を対象としてその影響に関するアンケートを行った.対象は同一歯科医師に治療を施されたASD患者113名の保護者(アンケート期間:2014年4~5月),および病院建て替えの時期に当科を受診したASD患者109名の保護者(アンケート期間:2019年4~5月)を対象とした.調査項目としては,歯科医師・歯科外来の変更後に総合的に態度の変化を認めたか,もし認めた場合はその詳細について,また保護者の不安なども調査した.結果として歯科医師変更では88.5%が交代した歯科医のもとで今まで通りの対応での診察が可能であった.一方で歯科環境の変化では64.2%が今まで通りの受診が可能だったと回答した.今回の結果からは歯科医師への「こだわり」をもっていたASD患者が比較的少なく,診療場所への「こだわり」は歯科医師変更よりは影響を認めたものの,歯科受診自体にそれほど影響を及ぼしていない可能性が考えられた.

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© 2023 一般社団法人 日本障害者歯科学会
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