2024 年 45 巻 1 号 p. 35-42
当科における小児薬物的行動調整下歯科診療の実態を明らかにするため,過去7年間に当科を受診した1~12歳の患児を対象に調査した.全身麻酔法(GA)および静脈内鎮静法(IVS)下に歯科・口腔外科治療を行ったのは116人(のべ145例)であった.うち障害児は47人で,発達障害と知的能力障害が多くを占めた.障害の有無で年齢・性別の傾向に大差はなかった.受診経路は,定型発達児では歯科の一・二次医療機関からの紹介が多かったが,障害児ではその他がやや目立ち,紹介のない例も散見された.薬物的行動調整法の内訳はGA 92例,IVS 53例であり,経年的にIVSの割合が増加傾向にあった.治療内容はう蝕処置が最も多く,特に障害児での割合が高かった.GAではう蝕処置を実施した例が多く,IVSでは抜歯や口腔外科処置を実施した例が多かった.障害の有無により受診にいたる社会的背景が異なり,要求される治療内容および薬物的行動調整法も異なる傾向にあることが示唆された.今後とも,きめ細かくニーズに対応することが求められるが,薬物的行動調整法は小児の身体的特異性に鑑み,小児の全身管理に精通した専門医により行われることが望ましい.当院のような地域中核病院において,麻酔科医や小児科医によりGAやIVSを実施することは合理的と考えられた.