2024 年 45 巻 1 号 p. 28-34
知的障害児童・生徒のう蝕罹患状況を把握することを目的に,某県内の知的障害特別支援学校で施行された学校歯科健診におけるう蝕の罹患状況を質問紙により調査を行った.また,県内二次医療圏別の特徴を明らかにするために,調査で得られた結果を県が公表している同年度の調査結果と比較検討した.
全児童生徒の受診率は96.4%で,各世代の受診率は小学部98.0%,中学部95.8%,高等部95.3%であった.世代が上がるほど受診率が低下し,小学部に比べ高等部が有意に受診率は低かった.知的障害児童・生徒のう歯の処置完了と未処置歯のある者の割合(以下,被患率)・未処置歯のある者の割合(以下,未処置率)に関しては,県が公表した各世代別の被患率・未処置率に比べ,特別支援学校小学部の被患率を除き被患率・未処置率とも1.9~5.8%高かった.また,障害者歯科認定医が常勤する県内唯一の医療圏(専門医療圏)から最も遠方にある医療圏では,被患率53.1%,未処置率38.8%であり,特に小学部では被患率62.5%,未処置率43.8%で,県が公表している同医療圏別のデータと比較して,被患率では8.1~21.6%,未処置率では14.3~20.5%高かった.
専門医療圏から最も遠方にある医療圏においては,歯科保健指導とともに障害者歯科に関し,専門性の高い医療者が勤務する医療機関の設置等の改善策の必要性があると考えられた.