2024 年 45 巻 3 号 p. 172-182
著者らの所属する医療機関では,摂食嚥下専門外来に偏食を主訴に来院した患児を対象に,歯科医師・歯科衛生士と特別支援教育の専門家で構成された偏食外来を開設した.本研究では,摂食指導の過程において偏食外来を活用し,偏食の問題を抱えている患児と保護者へ支援を行ったため,その効果について報告する.
2021年9月~2022年3月に偏食外来を受診した小児24名(男児19名,女児5名,年齢11歳以下)を対象とした.本研究では,偏食の要因を,「医学的問題」「発達状況」「生活環境」「児の特性」に分類して包括的に共通理解する過程で“偏食要因4分割法”を考案し活用した.偏食外来では偏食要因4分割法から得られた情報で,カンファレンスを行い偏食への支援方法を検討した.
支援方法は,「保護者に児の特性の理解を促す」が19名(79%)と最も多く,「発達を促す」は9名(38%),「生活環境を整える」は7名(29%),「医学的問題を治療する」は4名(17%)であった.偏食外来の受診後の保護者への聞き取り調査では,児の食行動に好転的な変化が現れたのは2名(8%),保護者の心理面に好転的な変化を認めたのは23名(96%)であった.
多職種と協働で,偏食要因4分割法を用いて偏食の構成要素を分析することは,偏食を多面的に捉え,包括的な支援方法を探るのに有効であった.指導内容としては「保護者に児の特性の理解を促す」が多かったことから,保護者への支援が重要であることが示された.