1998 年 73 巻 5 号 p. 264-269
マメ科植物の,成熟した休眠中の種子中の子葉には,ドーム状に隆起した表皮細胞が集まり,楕円形の小区画を成している状態が認められる.この構造は子葉の背軸面で,かつ中央脈の直上に位置している.これを cotyledon areole と命名した(Endo and Ohashi 1997,p. 527).これまでにマメ科マメ亜科植物の23連から報告されている(Endo and Ohashi 1998).しかし,その機能は不明であり,分類学的意義に関する研究も端緒についたばかりである.本研究では,同構造の存在が認められた23連から各1(または2)種を選択し,cotyledon areole の解剖学的特徴の変異を詳細に調べた.(1) cotyledon areole構成細胞は周囲細胞とサイズが異なる.すなわち,表皮の細胞は,より大きいか,あるいはより小さい.また,下皮と主脈へ向かう数層のcotyledon areole細胞は,通常,その周囲の細胞に比べ小型となるが,稀に,下皮細胞のみがより大型となる.(2) cotyledon areole 細胞の染色性は多くの場合周囲の細胞と異ならない.しかし,鉄ヘマトキシリンで染色されない顆粒を cotyledon areole 細胞にほとんど含まない数種では cotyledon areole 細胞は濃く染色されることにより周囲の細胞からはっきりと識別できた.