2025 年 46 巻 3 号 p. 221-227
低ホスファターゼ症(Hypophosphatasia;HPP)は,主症状として骨石灰化障害と乳歯の早期脱落(4歳未満の脱落)のどちらか1つ以上と,血清ALP値の低値が認められればHPPを疑い,ALPL遺伝子検査を行い確定診断するとされている.それゆえ,この歯科症状をきっかけにHPPの診断がなされることがある.当科では,本学医学部附属病院小児科と医科歯科連携のもと,HPP早期診断システムの構築に努めてきた.
本報告では,乳歯の早期脱落などのHPPが疑われる歯科所見の精査を主訴に当科を受診した初診患者の実態を調査することによって,歯科でのHPPスクリーニングの方法と精度を検証することとした.2008年12月~2024年12月の約16年間に,大阪大学歯学部附属病院小児歯科外来において,HPPが疑われる歯科所見の精査を主訴に受診した63例の小児のうち,乳歯脱落部位やその原因と時期,脱落歯の歯根の状態などの歯科的精査を行い,歯科的にHPPが疑われたため,医科的精査を目的に本学医学部附属病院小児科へと紹介した患者は25例であった.その結果,小児科でHPPとの診断を受けた患者は12例であり,歯限局型が10例,小児型が2例であった.
歯科的にHPPを否定した原因としては歯根吸収が最も多く,また,医科的にHPPと診断されたすべての症例において4歳未満の乳歯早期脱落を認め,脱落好発部位は下顎乳中切歯であったことから,確定診断にいたる過程において,HPPを歯科所見から疑い医科に精査を依頼する際には,「4歳未満の下顎乳中切歯の歯根吸収を伴わない早期脱落」といった所見が重要であることが示唆された.