抄録
断層周辺に形成される‘ダメージゾーン’について,岐阜県東部の阿寺断層を事例に調査研究を行い,断層周辺岩盤の苗木-上松花崗岩および濃飛流紋岩に,おおよそ断層から200m程度の範囲において,‘ダメージゾーン’が形成されていることを確認した.この‘ダメージゾーン’には,酸化物で充填された連続性の悪いネットワーク状の割れ目が発達するのに対して,断層影響の及んでいない岩盤中には,連続性が良く熱水性起源の充填鉱物を有する単一割れ目が卓越する.このことは,結晶質岩体中の割れ目は,岩体形成の早い段階で形成されたと思われる割れ目と,断層運動によって断層近傍に発達する連続性の悪いネットワーク状割れ目の2種類に分類可能であることを示す.これらの知見は,割れ目形態と充填鉱物の相違・組み合わせを用いることで,断層運動に伴う後生的に形成される割れ目と岩体内部にすでに形成されていた割れ目を識別し得ることを示している.このような割れ目形態・充填鉱物に注目した野外調査手法・割れ目解析方法は,地下備蓄や放射性廃棄物地層処分場などのサイト調査手法としても有効と考えられる.