応用地質
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論文
地すべり移動体を特徴づける破砕岩
―四万十帯の地すべりを例として―
脇坂 安彦上妻 睦男綿谷 博之豊口 佳之
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2012 年 52 巻 6 号 p. 231-247

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抄録
 近年, 界面活性剤を用いた高品質ボーリング技術により, 従来, 観察することが困難であった地すべり移動体の微細を構成地質と構造の観察が可能になった. しかしながら, 乱さない状態の高品質コアが採取されても, そのコアが有している地すべりに関する地質情報を適切に引き出せていなかった. また, 地すべりによって破砕された岩石と断層角礫の区別が困難という問題もあった. そこで, 九州の四万十帯に分布する地すべりで得られた高品質ボーリングコアおよび周辺の露頭などについて, 地すべり移動体と断層破砕帯の詳細な地質観察が行われた. その結果, 地すべり移動体周辺の断層角礫には, なにがしかの面構造が認められるのに対し, 地すべり移動体には無構造な角礫岩が認められ, この角礫岩が地すべりの地質学的認定指標となることが判明した. 面構造を有する断層角礫と地すべり移動体の無構造な角礫岩の違いは, それぞれが形成されたときの拘束圧の違いに起因している. すなわち, 断層角礫は高拘束圧条件下, 地すべり移動体の無構造角礫は低拘束圧条件下で形成されるものと考えられた. 地すべり移動体を地質学的に認定する際には, 岩石の破砕度区分と面構造の確認および無構造な角礫岩の分布位置と頻度が重要である.
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© 2012 一般社団法人 日本応用地質学会
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