応用地質
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論文
電気探査法による有明・八代海の海底下浅部の地質構造のイメージングと地下水湧出経路推定への応用
御園生 敏治麻植 久史小池 克明嶋田 純吉永 徹井上 誠
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2012 年 53 巻 5 号 p. 235-244

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抄録

 海底下浅部の地質構造を明らかにすることは,伏在断層の抽出,水質の空間分布の解釈,地下水の湧出経路の特定において重要である.海底下の活断層の位置や分布は音波探査により調査されている.しかし,音波探査では地下水についての情報は得られない.そこで,地下水を含む海底下約50 mの範囲の地質構造をイメージングするために,九州中部の有明・八代海を対象として,曳航型海底電気探査を適用した.両海は日本を代表する閉鎖性海域であり,地下水資源が豊富な熊本・八代平野に面している.測定に使用したケーブルの長さは250 mで,これに20本の電極を設置した.有明・八代海にそれぞれ4本,8本の計26 kmの測線を設定し,信頼性の高い比抵抗データを得るために3極法を採用した.海水の厚さを考慮した電位補正法と1次元インバージョン解析によって,宇土半島周辺で正断層を示唆する特徴,および地下水湧出経路と考えられる幅200 mの高比抵抗帯の存在が明らかになった.白川・緑川の河口では,後氷期の厚い海成粘土層(有明粘土層)の中に周囲に比べて高い比抵抗帯が現れた.これは海底地下水が陸源性野の淡水に起因し,この大規模な分布が高比抵抗帯に関連すると解釈した.八代海測線のインバージョン解析結果からは,日奈久断層の延長線上で比抵抗が大きく変化することがわかった.これは日奈久断層の繰り返し,かつ新しい動きによって,地下水湧出経路が形成されているためと考えられる.

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© 2012 一般社団法人 日本応用地質学会
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